Column002 日本にもっとでしゃばって欲しい!アメリカ進出の初期段階で起きたこととは!?

海外進出ででしゃばろう

コラム対談相手

宮川聡 Life is Tech !アメリカ法人CEO

東京大学工学部卒、スタンフォード大学経営大学院修了。証券アナリスト(CCMA)。2005年に大学卒業後、東京海上日動火災保険へ入社。海外事業の経営戦略・資本政策に携わる。2016年ライフイズテックに参画後、2019年にアメリカ法人CEOとして、ロサンゼルスにてビジネスを立ち上げる。社会課題を解決するアイデアを持つ高校生を応援する、インキュベーションプログラム「BLAST School」メンター。


さとしさん

ゆうきさん、2022年一発目もよろしくお願いします!

ゆうき

宜しくお願いします!2022年、始まりましたね!

Table of contents

もっと日本の企業やブランドが海外に出てきて欲しい!

さとしさん

雑談なんですが、この年末年始で日本の料理……おせちとか年越しそばが食べたいなーと思ってロサンゼルスで買い出しをしたんですけど、食材が一か所で全ては手に入らなくて……。
結局、何か所かスーパーを回ったんですよ。

ゆうき

わかるわかる。調味料とか食材とか。なかなか大変ですよね…笑

さとしさん

まあ手に入りやすいですよ。ロサンゼルスは勿論、アメリカの中でも圧倒的に。
だけどまだまだ不便なところがあるなぁ…と。だから更に日本のものが手に入りやすい環境になって欲しい!
そして日本食美味しいなぁ、と思ったそんな年末年始でした。

ゆうき

逆パターンかもしれないんですが、「ラーメン凪」っていう日本とアジアで結構な数の店舗出してるラーメン屋さんがロサンゼルスの一等地に去年冬から出店していて、僕も年末に食べに行ったら、すごい行列ができてました。
ラーメンはめちゃくちゃウマくて、「このクオリティのラーメンをLAで食べれるって幸せだなぁ」っていう体験があったんですけど。

さとしさん

それは幸せ。笑

ゆうき

やっぱり、もっともっと日本の企業やブランドにアメリカに出てきて欲しい!と。
そしたら単純に僕らハッピーだし。
一方でもちろん、既に進出してしてる企業やブランドもたくさんあるので、既存のものも新しい流れができることも、どちらもより盛り上がって欲しいなって思いますよね。

さとしさん

ですね。どんどんでしゃばっていって欲しいですね!

アメリカ進出をリアルにさせたブレークスルーポイント

ゆうき

ということで今日は、「日本企業がアメリカや海外に進出する」だとか「海外でビジネスを始める」っていう1番初期の段階のテーマについて、さとしさんと一緒に考えたいと思っていて。
特に、海外進出する前の段階で「どんなことが起きるのか」「どんなハードルがあるか」、このあたりを2人で話してみましょうか。

さとしさん

いいですね。僕らがぶち当たった壁をお話しするだけでも、価値があるかもしれないですしね。

ゆうき

さとしさんは、ライフイズテックをアメリカで1から立ち上げるっていう経験をされていると思うんですが、実際に進出するまでにどんな概要、時間軸、ステップがあったかを教えてもらえますか?

さとしさん

ステップとしては大きく3つぐらいですね。
1つ目はビジネスとして成り立ちそうかの確認。2つ目はプルーフオブコンセプトマーケット調査、オペレーション、進出形態どうするのかとかバックオフィス周り。3つ目はそれが出来るってなったブレークスルーポイント。
うちの場合は、米国本社のディズニーさんとの契約があったので、それが3つ目として大きなステップでした。時間軸でいうと僕がライフイズテックに入った2016年から3年位かけて…って感じでしたね。

ゆうき

なるほど。
僕はこっちに法人がある状態からスタートしてるので、すごく興味深いです。
まず1つ目のポイントから、もう少し具体的に教えてほしいです!

さとしさん

当時、ライフイズテックはオンラインのプログラムを作っていて、「スケールさせていこう」「より多くの人に届けよう」ってことで頑張っていたんですよ。
そのプログラムを英語化してグローバル展開を考えていたんですね。

ゆうき

なるほど。そこからだいたい3年くらいの期間をかけて、手応えであったり「これはいけるんじゃないか」っていう確信に近い状態を手に入れていったってこと…?

さとしさん

そうですね。オンラインのプラットホームの手応え自体は、最初の1年くらいでけっこう得られていました。
2016年が皮切りだったんですが、2017年も3〜4回シリコンバレーに長期出張して、そこでいろんな人に使ってもらって。かなりいい評価だったんですね。
なので、最初の2年間くらいである程度いけそうだなとわかった感じです。

ゆうき

なるほど。さきほど2つ目のポイントで「バックオフィスの整備」という話もあったと思うんですが、マーケット調査と並行してバックオフィス周りのこともやっていたんですか?

さとしさん

そうですね。
まずは「どんな形態で出すか」。会社なのか支店なのか支社なのかみたいな所から。
会社にしたとして、今度は弁護士さん、会計士さんにお会いしないといけないので、そういう方々に会って「実はこうやってくんだよ」という話を伺って、1個ずつやっていったのが、バックオフィス周りですね。

「そこに落とし穴がある」って気づいていないから落ちる

ゆうき

あー、わかります。僕も法人形態周りでは面倒なことが相当ありました。
さとしさんはその辺りで特に大変だったところとか、どんな事がありましたか?

さとしさん

2点かな。1点は、どなたにサポートをお願いするといいのかを決めること。あんまりネットワークがなかったので出会うのも大変でした。
もう1点は、細かいことなんですけど銀行口座をつくるのがめちゃめちゃ大変でした
当時はVISAも無くてパスポートベースで出張に来てたんですよね。個人の銀行口座は開けられるんですけど、ビジネスとなると難しくて。3回くらい断られて…。
たまたま幼い頃ニューヨークに住んでた時期があって、当時は子供にもソーシャルセキュリティナンバーが付与されていて僕も持っていたので、ギリギリ1つの銀行さんが開けてくれたって感じ。
まさか、ソーシャルセキュリティナンバーがないと法人の口座が作れないなんて思ってもなかった。笑
大きく言うとそこ2つですかね。口座を開いたときはホームラン打ったくらいの気持ちでしたね。笑

ゆうき

そうだったんだ!すごいラッキーでしたね。笑
でもまぁ確かに、「銀行口座つくるのがそんな大変なの…?」と思いきや…日本だったらすんなりハードルなく進められることが、アメリカに来て「こんなところで止まらなきゃいけないの?」なんてことはしょっちゅう起きますよね。

さとしさん

その通りっす。そこに落とし穴があるって気づいてないから、落ちちゃうんすよ。

ゆうき

ね。穴に気付いてないでしっかりと落ちるから、落ちた時にけっこう痛い。
「うそでしょ!?!?」みたいにね。笑

さとしさん

自分が歩んできた道の落とし穴は見えるんですけど、前は見えないから。笑

想定外だったディズニーとの協業が海外進出の決め手に

ゆうき

もう1つ。3つ目に挙げてたブレイクスルーポイントについても、どんなことだったのか是非もう少し詳細にお願いします。

さとしさん

これは運みたいなところもあって。
最初の2年間うちは、オンラインプラットフォームでプログラム展開しようという方向で動いてたんですが、2017年に日本のディズニーさんからお声掛けいただいて、オンラインの教育をやる事になって。
ディズニーさんとコラボレーションしたカリキュラムを、2018年の4月に日本でローンチしたんですよ。
それが結構ご好評いただいて「LAのディズニー本社でも話を聞かせて欲しい」となったので、2018年の6月にプレゼンをしました。
そうしたら「やりましょう!北米進出やりましょう!」となって。そこが進出する最後の決め手になりました。
結局決まったのは2019年なんですけど、2018年の12月には基本的な条件で合意できたので、そこから一気に具体的に進めました。

ゆうき

おぉーー、なるほど。このディズニーとの協業っていうのは、ある程度事前に計画や想定がされていたものだったんですか?

さとしさん

全く想定してないですね。
当時は、うちのブランドで勝負するつもりで戦略を考えていた中で、日本で協業の動きがあったので、一旦1年くらい海外展開をお休みしたんですよ。日本でディズニーさんとのプロダクトを作ることに集中しようってことで。
その間、僕は日本でのビジネス展開をずっと手伝っていて。そういう意味だと海外展開のお休み期間でしたね。

アメリカ最初のお仕事は「契約していたドクターの解雇」

さとしさん

ゆうきさんのケースは「既にアメリカで立ち上がってるものを軌道に乗せる」というミッションだったと伺ったので、
その辺りをどういう状況で、どんな風に進めていったのかをお聞かせできればなと思います。

ゆうき

僕がこっちに来たのは2018年の年末頃なんですが、その時点ではもうアメリカ・ロサンゼルスにおいては、現地法人も現場のクリニックも約1年ほど前に設立がされていた状態だったんですね。
そんな中、「そのままのビジネスの進め方だと上手くいかない可能性が高い」っていう状況でした。
実際に僕の仕事のスタートは、こっちで契約を結んでいた1番初期のドクターを解雇することでした。今振り返っても、かなり重い仕事でした…。

さとしさん

すごいスタートじゃないですか!笑 
0から組み立て直す時に、どういう思考で、何から手をつけていったんですか?

ゆうき

まず、ビジネスが動き始めている状況だったので「出血している」=支出があり続ける状態でした。
お金も時間もエネルギーも含めて既に使っているものがあるので、その出血を可能な限りどう抑えるかという点。
そこと並行して、法人のスキーム・形態だとか、日本の本社とLA法人とどういう関係でやっていくのかといった構築のし直しを、1年ほどかけて行っていきました。
具体的には、アメリカで医療クリニックを出そうと思った時に、現地の州の医療医師免許を持っているドクターによって所有されている医療法人でないと、クリニックを運営・設立が出来ないんですね。

さとしさん

まず医療法人を所有する必要があると。

ゆうき

そういう事なんですよ。
日本の本部・グループがどれだけこっちで医療法人を作りたくても、医師のライセンスを持ってる人と提携する形でないと、箱が作れない状況でした。
誰とどう手を組んで、どんな医療法人を作って、どうやって日本のグループと資本関係を結ぶか、もしくはマネジメント契約の様なものを結ぶか……というスキーム作りをする必要があって。
結果的に、4・5つくらいの法人が絡むような関係を作るっていうのを、弁護士さんとたくさん相談しながら、1年弱かけて作っていったという感じでした。

さとしさん

面白いっすねー。
法人スキームの所で追加で質問させて頂きたいんですが、
例えば、1つの医療法人をドクターが持ってるとした時に、日本法人としては医療法人を所有する感じなんですか?提携って事なんですか?

ゆうき

実は医療法人については提携という関係のみで、所有が出来ないんです。
医療法人には、ドクターと医療機器、医師免許を持ってる人でないと購入できない機材、資産をおさえておいてもらって、
それ以外ところ、……例えば不動産を持つことだとかは、医療法人でなくても出来るので、そこは日本のグループが全部保持・保有するような状態を作って、提携関係を結んでいました。

さとしさん

ハイレベルに見ると、日本のグループがプラットホームのような感じですね。医療に特化した各ドクターは、医療法人に任せて展開していくと。

ゆうき

仰る通り。その辺り、僕自身もそうですし、僕の周りにもこのスキームで既にビジネスをやっている人が皆無だったので、1から学びながら作るのがすごく時間が掛かりました
しかも、それをビジネスが回ってる状態で進めていかなければならなかったのは、なかなかタフだったなって、改めて思いますね。

さとしさん

いやー、すごいです。聞いただけでゾクゾクします。笑

進出の一歩を大きく前進させるカギとなる「出逢い=ご縁」

ゆうき

もう1つ、僕が改めて大切だなと思うことが、ありきたりかもしれないんですけど「ご縁」につきるなと。
「ドクターとどんな関係を結ぶか」が、医療クリニックを出すにあたってのキーポイントとした時に、日本グループのオーナーとしては、かれこれ5年以上は「いつかアメリカに進出したいな」っていう想いは、おそらく持ってたんですよね。
そんな中で、アメリカで医師ライセンスを持っていて、日本本社グループのミッション・ビジョンに共感してくれて、「じゃあ一緒にクリニックを出して行きましょうよ」という関係性を作るってなった時に、いい人と出会えるかどうか、っていうご縁が、すごくすごく大切なポイントになるので…。
そのご縁と出会うまでに、少なくとも数年の時間をかけていた、っていうのは僕も話を聞いています。

さとしさん

ゆうきさんがいらっしゃってからのご縁に関してなんですが、新しく提携されたドクターさんもいらっしゃるんですか?
やっぱり、ゆうきさんがご縁を作られたのかなぁと思うんですけれども。

ゆうき

答えはイエスですね。
最初こっち来てから、2〜3か月の間でドクター50人くらいと面談したり会ったり、一丁前に「こんなビジョンがあるんだ」と、アメリカでの美容医療のビジネスなんて全然わかってないのに偉そうに語ってました!笑

さとしさん

パートナー探し、提携するドクターさんを探すにあたって、ゆうきさんが大事にしていたものとかはあるんですか?
「ちょっと違うな」っていう人もいるわけじゃないですか、その辺を、どうご自身の中で「この人だったら上手く行きそう」みたいなのがあったのか、気になって。

ゆうき

役割分担は、日本でビジネスをしていた時以上に明確に言語化し打ち出すという所かなと思ってます。
ドクターの方々は、治療・医療行為をメインで行ってもらう訳なんですが、一方で、経営・運営するって事だとか、いわゆる医療行為以外の領域にも関心を持つ方ももちろんいるんですよね。
その点で「本当に自分たちが得意な領域が何か」「どんな役割分担でそれをやっていきたいのか」「一方で相手に期待することは何なのか」ってことに対しての考え方だったり、そもそもそれはどんな価値観や戦略からくるのか…といったことのすり合わせは、とにかくたくさん会話をしていく中で見つけていこうとしていました。

ビジネスサイドの「出血」をどう抑えていったのか

さとしさん

さっき、出血を抑えながら今みたいな事をやられていたとのことでしたが、
ビジネスサイドで出血を抑えるのも、けっこう大変だったんじゃないですか?
その辺りももう少しお話伺ってもいいですか。

ゆうき

そうですね。大出血。笑

さとしさん

大出血!笑

ゆうき

正直これは悪い例かもしれないですが、手当たり次第、試し続けるしかなかったんですよね。要は、集客しましょうという時に、どの媒体がいいのか。
ラジオ、新聞、雑誌、口コミ、紹介、イベント開催、…リードを獲得するために、何が効率的で、誰に対して何をすればいいのかも全くわからない状況の中で「もうクリニックはありますよ。」っていう、そんなレベルだったので。
毎週毎月、新しいことを試しては、その反響がどうだったのかを繰り返し見ていきながら、やることをどんどん少なくしていったというようなイメージですね。

さとしさん

最初は幅広く色々やってみて、ナローダウンしていくみたいな。

日本のやり方をそのまま海外に持ってきても成功しない

さとしさん

僕らは2人とも「親会社の子会社」という形で来てるじゃないですか。
親会社との信頼関係・合意の獲得みたいな話なんですが、どれくらいの権限を子会社に渡していたかを話してみたら、面白いかなと思いまして。
僕の場合、けっこう上手くいってる気がしていて。
というのも、日本企業がアメリカに進出する時に失敗するパターンを何人かの方に直接伺った時に、共通してたのは、日本で成功したやり方を持ってきてそれを変えようとしないなぜならば、権限が子会社にないからとよく聞いて。
僕は、そこの話はちゃんとアメリカに進出する前に日本の皆さんと話をして、アメリカで自由にやっていいって取り付けた上で出てきたんですね。

ゆうき

素晴らしい。

さとしさん

その辺り、ゆうきさんのケースはどうだったのかなぁと。

ゆうき

ここでは話せないことが沢山出てくるかもしれないですね。笑

さとしさん

…!笑
じゃあお話頂ける範囲でちょっと!笑

ゆうき

それがいかに大切なものかっていう事は、3年間かけて身に染みて痛感する瞬間っていうのが何度もありました、ぐらいに留めときましょうか。笑

さとしさん

なるほど!
そしたら、今もし親会社の方と話そうとすると、この辺は違った方法を…?

ゆうき

絶対に最初に抑えておくところだなと思います。
ある期間、どういう風にやっていくのかを合意形成して、その上で、トライアンドエラーでやってみて、何が起きたのかを検証する。
当たり前のことなんですけどね…ここのコミュニケーション。想像している以上に、海外の現地法人と日本の本社グループとの認識や感覚のズレは起き続ける。

ゆうき

こんな感じで、さとしさんと僕だけでもまだまだ話足りないくらいたくさんネタが出てくるなって思うので、進出するまでや立ち上げるまでのテーマだけでも、他の起業家だったり経営されてる方に話を聞いて、サンプル・事例をたくさん集めるのも、ボリュームができて意義があるものになりそうですね。

さとしさん

本当にそう思います。引き続き、やっていきましょう!
今日もありがとうございました!

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