Column005【中編】 アメリカ進出後の採用の裏話!アメリカで見つけた数々の発見も

異国でも価値観の合うスタッフに出会いたい〜人材採用について考える〜中編

「湘南美容外科クリニック」アメリカ法人元CEOの高橋佑樹と「Life is Tech!」アメリカ法人CEOの宮川聡の対談。前回の記事に引き続き今回はアメリカ進出後、どのような手段を使って採用を行っていったのか。また、人材についても二人で沢山語り合いました!



コラム対談相手

宮川聡 Life is Tech !アメリカ法人CEO

東京大学工学部卒、スタンフォード大学経営大学院修了。証券アナリスト(CCMA)。2005年に大学卒業後、東京海上日動火災保険へ入社。海外事業の経営戦略・資本政策に携わる。2016年ライフイズテックに参画後、2019年にアメリカ法人CEOとして、ロサンゼルスにてビジネスを立ち上げる。社会課題を解決するアイデアを持つ高校生を応援する、インキュベーションプログラム「BLAST School」メンター。

ゆうき

さとしさん、こんにちは!
今回は前回の続きで、「人」と「採用」をテーマにしてお話できればなと思います!

さとしさん

そうですね!これについてはお話できること沢山ありそうですね!

Table of contents

社員第一号は偶然だった

ゆうき

さとしさんがアメリカに来て、採用に関して、「何からどう始めたのか」「どう手を付けていったのか」を教えていただけますか?

さとしさん

まず最初にビザを取る必要があって、アメリカで市民権を持ってる人、またはグリーンカードを持ってる方を雇う必要があったんですよね。

一方で、ビジネス的にもマーケティングのスペシャリストと、BizDevが欲しかったんです。

そうしたら、たまたまシリコンバレーのとあるスタートアップで働いていた日本人のグリーンカードホルダーの方が、Life is Tech!の日本の採用サイトから「興味があります!」と連絡を下さったので、すぐ連絡してLAに来てもらったんです。まさにセレンディピティ(偶然)でした。

ゆうき

それで採用したって事ですか?

さとしさん

そうですね、採用しました。その方が社員第一号です!

僕らの場合はエキスポ(博覧会)に出展もしていたので、最初の頃はライフイズテックの日本のメンバーが出張で来て手伝ってくれてたんですよ、なので絶対に採用しないと回らない状態でもなかったんですね。

最初はハイブリッド型で、日本からの長期出張者と、現地で採用できた社員第一号の方で事業を始めました。

ゆうき

採用的には参考にならないかも!笑

さとしさん

そうですね。その後も3人目までセレンディピティです。笑
2人目と3人目は少し再現性のあるお話です!

エキスポやマッチングのサイトを活用

さとしさん

でも2人目は、エキスポ出展時に、レジュメを持ってきた人を採用しました。

話を一段昇華させると、僕はそれまで自分達を売り込む事しか考えていませんでした。でも求職側の立場として、興味があるエリアのエキスポに行って仕事を探すのもありだと思って。

僕が出ていたアニメエキスポは全米から30万人ほど来るわけですよ。日本の大きな玩具メーカー、イラストレーターさんが自分たちの作品を持ってきて来る人たちに「自分の名を売ろう!」みたいな場所なんですけど、日本のアニメファンからすると、日本からアニメーションクリエイターが集まる場所がないので興味がある人にとってはとても楽しい場所なんですよね。

仕事をしたい人にとっては、そこで探すのって確かにいいかなぁって思いました。そこでは結局5通レジュメを受け取りました!

ゆうき

そうなんですね!そういう場所なんですか?

さとしさん

それが凄いと思って。面白いと思ったのは、その人達って自分たちがやってる事に少なからず興味があって、実力がフィットしていれば活躍する社員になる確率が高いんですよ。そういう意味では新しい発見でした。

さとしさん

そして3人目、これは大成功した例なんですけど。

アメリカにフリーランサーとマッチングしてもらえる「Upwork」っていうサイトがあって、そこで見つけた方なんですけど、

良かったのは、お互いの事が分かった上で採用できたので全くミスマッチが無かったんです。

その方は今、うちのVice President(業務遂行のトップ)をやってくれていてどんどん昇進して大活躍してるというのがあるので、そういう採用もありですよって。

ゆうき

ありがとうございます。メンバーとして活躍しているなら、素晴らしいマッチングだったというのは間違いないですね!!

社内に「日本人」を置くかどうか

さとしさん

ゆうきさんの場合、初期の採用について教えてください!

ゆうき

ぼくの場合はもっとベタな採用の仕方をしていて、大きく分けると「人からの紹介」「リファラルの採用」「人材紹介を使っての採用」「掲示板サイトでの採用」でした。

職種がいくつかあったので、「ドクターを採用してます」とか「ナースを採用したいです」とか「受付カウンセラーを採用したいです」など、職種に応じてどの媒体、どの方法を使うのが効率的かを色々探りながらやっていたんですが、日本でも名が知られているIndeedとかの掲示板を使って採用したメンバーが一番多かったです。

ただ正直、何をどう使って採用すればいいのかなんて最初は全くわからなかったので、考えられるものを片っ端から使ったという感じでした。

さとしさん

具体的にどのように求人したのですか?

ゆうき

クレイグスリスト(地域ごとの不動産情報や求人情報などが掲載されたウェブサイトの名称)とか、どの言語を喋れる人を採用したいかによって、その言語に特化した掲示板、採用サイトを各2つ3つずつ使ったり、日本語、中国語、韓国語、ベトナム語、スペイン語、あとはラジオを使ったこともあったり、思いつく事を片っ端からやりました。

3年を通してオンライン面接を500回以上やったり、レジュメも何千名目を通したかわからないぐらい見たり、媒体とか方法、ルートでいうとそこから始まりました。

さとしさん

ちなみにLinkedInは使ったんですか?

ゆうき

使ってないですね。僕ら学歴とか全く関係ないんですよ、うちの職種でLinkedInを使ってる人たちのほうが少ないのかなと思います。

医療系だとやっぱりIndeedが一番多くて、あとは医療系に特化した人材紹介とかドクターに特化した紹介会社とかもあったり。

ドクター1人、年収3000万の人を一発決めたら紹介料で1000万払うみたいな、そういうところに特化してる会社もありました。

さとしさん

日系の人材紹介会社さんもあるじゃないですか、例えばパソナさんとか。そういうサービス等は使った事はありますか?

ゆうき

使おうとしたことはあります。でも結果的に採用はしてないですね。

特に日系の人で「こういう人種が欲しいんだ」って特化して人を探していた時は、利用していたことはありました。

さとしさん

僕も結局活用したことはないんですけど、最初に日本からやってくると、そういうバックオフィス周りの相談を日系の方にすることが多いじゃないですか、日本語でラクだし。

でも採用は、ローカルの方を対象にしたビジネスだとしたら、現地の人を採用したいじゃないですか。

今回のテーマの「採用」というところで言うと、ビジネスや業界によって使い勝手のいい悪いはありそうですね。

ゆうき

間違いなくありますね。

組織図だとか、どういう戦略で作っていくかもありますし、日本の本社とのやり取りをしてほしいとか、日本のエッセンスをできるだけこっちに持ってきたい、みたいな文脈になったとき、やっぱり日本人を採用したい、そのほうが楽だよねっていう考え方もあると思うんですよ。

一方で、日本語を話せる人、日本人を採用すると、ビジネスの展開上正解なのかといったら、全くそんなことはないと思います。

さとしさん

今の日本人の話でひとつだけ、今後のためにトピックスを上げておくと、社内に日本人を置いておきたいかどうか、こっちのローカル社員だけで組織を作っていくのかっていうのをお話したいですね!

年齢や性別を聞いてはいけない…というタブー

さとしさん

それだけ採用をしていると色々な事があったと思うんですよ。特に来てすぐだと、日本では常識であることがこっちではそうじゃない、みたいな。
いくつかお聞きしたいです!

ゆうき

いっぱいありますね。まずレジュメに写真が載ってなくて。笑

顔を見てなんとなく「こんな感じの人ね」みたいな想像をしたくなるところが、写真がない。

さらに生年月日とかあるものだと思ってたんですけど何回見てもなくて!笑 しかも男性か女性かもわかりませんみたいな。

年齢が採用における判断基準になるならないっていうことすら口にしていいのか、判断基準にしていいのか、いけないか、いわゆるタブー的なものがあるのも知らなかったので、最初レジュメを見た時は「あれ?」って。これって全部情報書いてるのかな?ぐらいでした。

さとしさん

いい話ですね。初めてアメリカ来たら、それは驚きますよね。僕らカリフォルニアにいますが、法律で相手の年齢とか性別とか家族構成とか、今いる会社の年収とか聞いたらダメですからねぇ。

ゆうき

日本から来たメンバーとか「結婚してるんですか?」みたいに気軽に危ない質問とかしてくるから、ちょっと待て!みたいな。

あと未だに覚えてるのが最初こっちに来た時、知り合いの人たちから「アメリカで面接してるってことは、当然これぐらいの常識は押さえてますよね?」とちょっと鼻で笑われながらいくつか言われて「いや全然知らないです、そんなの」みたいな。

「HRコンサルからそういうレクチャーを受けてください」って言われて、「アメリカの面接でやっちゃいけないこと」が書かれた冊子を渡されて1時間くらいレクチャーを受けたのを覚えてます。

さとしさん

僕もそういうレクチャー受けました!
僕も一つ共有すると、「Hi there!」っていう人がいて、 俺の名前知ってるのに呼ばないのか、失礼だなってずっと思ってたんですけど、実はそれはカルフォルニア独特の「Hi there!」でむしろポジティブな声掛けだったという。なかなかカジュアルですよね。

ゆうき

失礼じゃなかったね。笑

面白いのが、アジア系、日本人は絶対そうだったけど、ジャケット羽織ってたりとかしてて。面接をやればやるほど、オンライン、レジュメ見るのも1人20秒ぐらいで読めるようになって、オンラインつけて10秒ぐらいで、「はい、あり!」「なし!」みたいな判断をするのが癖みたいになりました。

さとしさん

あとは皆自然体じゃないですか?
年齢とか性別を聞かないのと一緒で、激しく髪を染めてる人もいるじゃないですか。

ゆうき

タトゥーだらけとか。最初は驚きますよね。

かしこまった感とか、例えばCEO(最高経営責任者)って言ったら「Oh! really?」みたいな、かっこいいねみたいな感じ。日本だとかしこまるようなところが、あっちからすると「エー、そうなんだ?」「仕事楽しいの~?」とか聞いてくるから、「楽しいよ!」みたいな。

面接では喋らせずに「質問」をさせる

さとしさん

強気に来る人もいますよね。

レジュメ見ました、喋って貰いました、最初の10秒なのにやたら強気な人がいて、とにかく自分は何でもできるって感じで来るからみんな同じに見えちゃって。

日本の面接って新卒採用で皆同じようなストーリーで同じに見えるとかよくニュースになってますが、それとは違う文脈で皆「できる」っていうから本当にできるかどうかわからないじゃないですか。

ゆうき

その通りだと思います。

これは面接のやり方なんですが、相手に喋らせるとずっと喋り続けたり、自分がどれだけできるかを延々言ってくるのがよくわかったので、

あるタイミングから「あなたはうちの会社のホームページ見てるよね? この職種についても投げてるね、その上であなたから私に対する質問は何ですか?」みたいな事を僕から投げて質問させるようにしたんですね。

すると、その人がどのレベルのことを考えていて、どういう前提でこっちに望んで来るのかっていうのが質問から見えるので、その人がどのレイヤーで何を見てるのかっていうのと、どのクオリティで何ができるからこの質問を投げてくるんだっていうのがある程度見えてくる気がしました。

さとしさん

それは素晴らしいですね!それは一次面接ですか?

ゆうき

そうですね。レジュメでフィルタリングしているのがどういうことがどれぐらいできる、できないっていうのを、現場の人たちがもう少しチェックすることは必要だと思うんですけど、

先程のさとしさんの話でいうと、喋らせるといくらでもあっちから言ってきたり、自分がどれだけすごいのかみたいなことを言ってくるので、喋らせない。笑

さとしさん

それはいいっすね。僕も2つやってることがあって、

1つは、一次面接は別の人にやってもらって、それを通ってきたら会うことにしていて。ここでは完全にその人のバリューシステムしか質問しないです。

どれだけ仕事できるかは、今日は興味ないからって最初に言って、あなたがどういう人なのか教えて、私も教えるから、と。僕の人となりとこの会社のこと、フィットしてるか確認したいから。そしてひたすらその人の生きざまを聞きほぐします。

ゆうき

それ、どういう話をするの?

さとしさん

「君はなぜこういう大学に行ったの?」「なんでその仕事をしたの?」とか「セールス好きなんですね、セールスの何が好きなんですか?今なんで転職するの? セールス今やってるじゃん、なにか嫌なことがあるの?」とか、何故今のポジションが嫌なのか、何故次に行きたいのかを凄く聞くようにするんですよ。

最後はゆうきさんと似ていて、調べてない人は何も聞いてこないじゃないですか。なんでうちの事をいいと思ってるのかとか、質問は何かあるかを聞けば大体わかりますよね。

もう1つは見抜けない話。本当にこの人にスキルがあるのか見抜けないことがあったから、課題を提出して、今の会社の状況をほぼそのまま載せて、これにどうやってあなたは対応しますか?っていうプレゼンを7枚ぐらいで作ってもらって、最終面接で1時間発表してもらっています。

普通に仕事してるときと同じノリで、こっちから質問して詰めるようにしてやると、働いたときの雰囲気もお互いにわかるし。

ゆうき

すごい!そこまでやったら見えるものありそうですね。

さとしさん

そうなんですよ、それをやってからスキルのマッチングが結構あがったんですよ。最終に来る人ってだいぶ絞られてて、例えば3人いたとすると面接での評価がAさん、Bさん、Cさんの順番で1位、2位、3位だったとすると大体変わります。

さとしさん

あとは、今まで1回も面接で1位だった人を採用したことがないんですよ。プレゼンさせると超ポンコツで!

喋るだけだとこっちが脳内補完するんですよね。向こうがAと言ったときに、こっちがAができるってことはB、Cまでいけるね、オッケーって思ってるんですよ、たぶん無意識に。

でもプレゼンしてもらうと、Aと言ったらAしか返ってこない。またその横でやらなきゃいけないBとかCとかDってどうなってるのって話ができるんですよ。気を付けなきゃと思った。

自分のバイアスがあってポジティブに見始めちゃうと、Aと言ったからBもCもできるだろうって思っていた自分がいたのでそれはちゃんと言わせなきゃ、アウトプットできるか見なきゃ、と思ったんです。

ゆうき

採用だけじゃなくて日常の仕事を見ても全く同じだと思いました。

こっちが思っている以上に言語化をしてその上で、マルなのかバツなのかを確認する作業やプロセスをやらないと、見落としとかバイアスがかかった状態が前提でこっちが作ってるってことは往々にしてあるんだなと、こっちに来て特に思うことかもしれないですね。

さとしさん

思いますねー。時間が限られてるからもっと難しいですよね。

試用期間は設定するのか?

ゆうき

さとしさんの所はプロベーションピリオド(試用期間)を使って試すっていうのはやってないんですか?

さとしさん

一応3か月は設けてるんですけど、プロベーションがあるかどうかって法的にはあんまり関係ないみたいで。交渉するとき「あなたはプロベーションだから」って言ってその期間でアジャストする。

例えば、元々これぐらいのレベルを期待してて3カ月経ったら給与こうしますって言ってたけど、ちょっと据え置きねって言って安くするとか、交渉上だけらしいですよ。

だからいつでもお互いに辞めますって2週間なり、事前に言えば辞められるっていう仕組みがありますね。

ゆうき

それで2週間前通知で「辞めます!」って言って辞めていったメンバーは今までいましたか?

さとしさん

いましたね。でも突然辞められた感じではないですね。パフォームしてなかったから、パフォーマンスインプルーブメントプラン(通称PIP)を出したら、やっぱり辞めるって言ってきたんです。

急に辞められたことありますか? いいと思っていた人が2週間で……みたいなこととか。

ゆうき

育成して技術や知識を入れてもらって、「さあ戦力として活躍してもらうぞ!」っていうタイミングでサヨナラってことは今まで何回かありましたね。特に看護師さんが多かったです。

さとしさん

1番大変なパターン…。その人の立場からしたら、スキルを身に着けて次に行こうと思って入ってきたんですかね。

ゆうき

可能性はありますよね。キャリアの思考として、ある所で務めて自分がどれだけ施術をやるか、お客様を診るか、それに伴ってどういう技術を身に付けるのかということをして、独立するか自分の事を評価してくれるところ、要するに給料なども含めてクリニックを任せてくれるようなところに転職する、みたいなステップアップを試みるキャリアが多いので、環境をよりうまく使って自分のキャリアを良いものにするぞっていう前提でいる人達は多いかもしれません。

さとしさん

元々ナースは流動性が高い職種ではあるわけですね。
こっちの人って平均どのぐらいの期間で辞めていくんですかね。

ゆうき

どうなんでしょう。

レジュメを結構な数みてきて、1年から2年のスパンで動いてるぐらいだったらある意味普通というか。むしろ3年から5年ぐらい同じところに勤めていると、随分長く勤めたねっていう印象がありますよね。

どこまで本当かわからないですが、新しいところにステップアップすることにチャレンジする気持ちがないから、そういう状態なんでしょうって評価される側面もあるって聞いたりもします。

さとしさん

ステップアップで5年ならいいですよね、ジュニアで入って1年ごとにちゃんと職種が上がって5年、とかだったらいいんですけど。大体2年ぐらいで辞職しますよね。組織の話かもしれないですが、辞めちゃうかもしれないから2年ぐらいになってきたら気を付けないといけないです。

ゆうき

今回はこの辺で!想定はしていましたが、どんどん思い出してきてもっと語りたくなっちゃいます。笑
次はもう少し組織の戦略的なところも含めてお話したいですね!

さとしさん

そうですね、組織とも関係しますからね。
ゆうきさん、今回もありがとうございました!!

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