インタビュー相手
下村 拓哉 Lrauogh LLC. Founder/CEO
大阪府出身。大学在学中から海外を旅して人の繋がりの大切さを知る。2年で脱サラ→イギリスで起業した後に日本で廃業。結婚を機に某検索大手G社の中でリクルーターとして働き、メガベンチャーや大手企業の本社と海外子会社で人事として従事。10年間の海外経験(イギリス・シンガポール・アメリカ)とTech/Recruitingを武器に、2021年Lraoughをカリフォルニア@LAで創業。パッションは「面白い人と人を繋ぐ」こと。
アメリカでは、転職=キャリアアップのチャンス
今回のテーマなんですけど、実際に人を採用するっていうところに関して具体的にお話を聞いていきたいなと思います。
市場の状況のお話があって、企業側が人材の確保をする中で、どんなツールや手段を用いて、どんなアプローチで人材を採用しているのかについてお話を聞かせてもらえますか。
アメリカは採用ツールみたいなものは結構普通に使っていて、ATSっていうApplicant Trucking Systemと呼ばれるものがあるんですけど、そういったものの数は日本の比じゃないぐらい、何百とあると思います。
全体感から話すと、日本ってやっぱり転職しないですよね。
以前と比べたら増えているような気がしていたけど、まだまだ日本での転職数は少ないんですね。
今はだいぶ時代が変わってきているんですが、日本は転職に対してネガティブなイメージがやっぱり強くて、アメリカってざっくり言うと転職イコールキャリアアップなんですよ。
アメリカはキャリアダウンな転職なんて当然しなくて、上がる転職しかしないですね。
転職する人の数が少ない日本
日本も昔と比べたら転職も当たり前になってきたと感じていたけど、アメリカと比較してしまうと、やっぱり日本は転職数が少ないんですね。
日本ってキャリアアップしていくには石の上にも三年じゃないですけど、長く同じ会社に勤めることによってようやくポジションが掴めたりとか、面白い仕事を任されるっていうのがありますよね。
それが転職や採用市場にどういう影響があるかっていうと、日本って転職した人を探すのめっちゃ大変なんですよ。
そもそもいないっていうか。
みんな転職に弱気っていうか、転職するのにすごく力がいる。
そうですね。
どうしてもまだ日本のキャリアアップの方法って、長期雇用ありきで考えられているように思います。
だから人材紹介会社が非常に有効で、転職したいと思っている人だけを限って紹介できるっていうことが、価値のあるビジネスとして成り立っている。
料率って言われる、採用したら30%、35%って支払うっていうのもあるんですけど、あれは日本が恐らく世界一高いんじゃないですかね。
アピールしなければ、転職されてしまう
今、日本ではエンジニアとかだと50%とか、100%払いますみたいなところもあるんです。
年収1000万の人を採用すると、1000万を人材紹介会社に払うという、それぐらいしてでもそのエンジニアが欲しい。
どういうことかというと、裏を返すとめっちゃ難しいってことなんですよ。
そういうことですよね。
アメリカとは背景が全然違うということですね?
アメリカはいい給料を提示して、いいカルチャーを提示して、今よりこっちのほうがいいじゃんって説得できれば、分かったって簡単に転職します。
逆に言うと、転職されてしまうカルチャーもあります。
紹介会社が全部面倒見ます!とかではなくて、どちらかというと会社の危機感としてマーケティングとか他の部署も一緒なんですけど、自社にそういうノウハウを溜めて溜めてどんどん強くしなきゃねみたいな意識があります。
どんな手法を用いて人材を探すのか、アピールしていくのか、アメリカやグローバルでそういうことをしたければ、それならではの背景も知らなきゃいけないし、それに合ったやり方をする必要があるなって思いますね。
話逸れちゃってる気もするんですけど、採用に関してどういう工夫をしていく必要があるのか、自社の採用力をどうやって高めていくか、どう強くしていくかみたいな考え方が、欧米ではすごく大事です。
その時に戦えるだけのコンペンセーション(報酬)が重要になってくるかなと思います。
グローバルシーンで人材採用したいなら
しもたくさんが見ていて、日本の感覚で人材を募集したり採用しようとしても、そのやり方ではうまくいかないよ、アメリカやグローバルで採用したいんだったら、こういうアプローチをしないと響かないよとか、採用しても大変になるよみたいな、そこらへんの違いや気を付けなきゃいけないギャップってありますか?
カルチャーは本当に大きいと思っています。
コンペンセーション(報酬)も色んな課題があって、日本だと、社長より高い給料を何で払わなきゃいけないんだみたいな議論があると思うんですけど(笑)
アメリカはむしろ一般職やマネージャーのほうが社長より高い給料をもらってるじゃん!というケースが、一般的ではないけどあります。
そこはそこで努力していきましょうっていうのは置いといて、カルチャーの部分ですね。
これは働く働かない関係なく、日本人が持ってる良さとか文化の良さがあると思うんですが、アメリカ人が感じている、こういうのがいいよねっていうのは全然違います。
カルチャーが違うから、採用の時に気を付けるポイントもまるで違うわけですね。
アメリカは就職して、会社にロイヤリティ(忠誠心)を持ってがっつり働くっていう人ももちろんいるんですが、そういう人たちはどちらかというとマイノリティ(少数派)なんです。
自分のキャリアがこの会社にいてどう上がっていくのかとか、例えばマーケッターだったらマーケッターとして自分はどれだけ成長できるのか、2年後、3年後にこの会社にいたら自分はどんな給料になるのかとか、そういうことを重視して転職してきます。
日本の就職活動でそんなこと言ったら中々採用してくれないと思いますけど。(笑)
僕もそんなに数いっぱい知ってるわけじゃないですけど、日本だとあんまり想像できないですね、そういう会話(笑)
アピール上手のアメリカ人は見極められる?
「3年後こういうふうになっていたいのでこの会社に入りたいと思ってます!」とか、そういうこと言われてもアメリカだと「わかった!いいじゃん」という話になると思うんです。
日本だと「え。なんでうち受けてるの?」みたいな議論になると思うので、そこらへんの価値観は違いますよね。
日本の文化が一概に悪いわけじゃなくて、逆に社員を大事にしたりとか大切に扱ったり、できれば自社にロイヤリティ(忠誠心)を高めてもらって、やっている事業にコミットして欲しいみたいなのって凄くいい部分ではあるんですよね。
一般的にはアメリカって個人で勝負してるっていうか、自分も自分の家族を守るのもその人の責任みたいなところが強いし、リストラされてしまうような世の中でもあるので、その間にどれだけそのパワーを付けられているかっていうのが、すごい大事になってくるわけですよ。
そういうところをアピールできるかどうかというのが、重要なポイントになってくるかなと思います。
今アピールっていう言葉を聞いて、1つはこっちの人たちってすごい口がうまいじゃん。アピールが上手。自分たちのことをすごい!って表現するのに長けている印象があるんですよね。
一方で日本は、企業もそうかもしれないけど、どちらかというと10の実力のものを10と言わず、20とも当然言わず、どちらかというと5とか6みたいな言い方をする印象があるんです。
HR(ヒューマンリソース)のお仕事をされていて、そこらへんの実態ってどうですか? 日本企業ってこういうの気を付けた方がいいよってことはありますか?
難しい質問ですね。(笑)
さっき言ってくれた通り、こっちの人は基本的に1のことを10に見せるっていうのは得意です。
できますできますってみんな言うし、レジュメにもできるって書いてますよねっていう感じなんですけど、それは受験に受かるのが大事なんでしょぐらいの価値観なので、そういうふうに考えます。
日本は、嘘つきたくないとか、モラルを重視してレジュメを作ると思うんで、基本的には面接の中でも嘘つかないし、自分らしく等身大でくると思うんですよね。
そこらへんの見極めは、纏わないですけど、難しいところですね。
そういう対策をバンバン取ったんだけど、取ったら取ったで他の罠にはまっちゃったみたいな話もよく聞くので。(笑)
質問が漠然としていたんですが、見極め方について日本で採用するときの感覚と同じ感覚でやってもうまくいかないんじゃないかって僕は思うんですよね。
落とし穴じゃないけど、対策とか心構えとして、どういうものを持っておいたらいいんだろうなって気になりました。
アメリカで採用するときの心構え
アメリカって合う合わないがすごい明確っていうか、就職するって大変なことでもあるんだけど、辞めることに対しても寛容なんです。
転職が多い人に対しても、基本的にはめちゃくちゃ寛容だったりするので。
レジュメにも書かないっていうのも普通だから、2ヶ月3ヶ月ぐらいで辞めた会社って書く人いないんじゃないですかね。
よっぽどそこで得られた経験とかあれば書きますけど、こっちの環境だとネガティブになりそうなものは敢えてレジュメには書かないことが許されてます。
まとめると、要は失敗してもいいかなぐらいの感じでお付き合いしてる人が、転職市場でも多い。
会社側もそんなテンションでやってるっていう感じですね。
前提、心構えが違うんだなっていうのは感じました。
僕も美容の仕事をしてる時に、日本側のメンバーが想定している、スタッフに対して求めるロイヤリティみたいなものとか、これぐらいのことは考慮してやってくれるもんなんじゃないの?っていう価値観の違いがあったんです。
やっぱり日本の会社とこっちだと感覚が全然違うんだなって思った場面が何度もあったなって、今ふと思い出しました。
僕も結構そういうテック(技術者)領域の会社で働いてたりしたことがあるので、日本の一般的な感覚とずれてるところがあると思うんです。
入ってきた人に対して家族みたいな感じでちゃんと迎えるのが日本のいいところで、研修もしっかりしていますしね。
逆に言うと、間違ったことをやっちゃダメよというのも、すごく細かくルール決められてるから。
なるほど。
日本の基本的な価値観のままで相手に労働を求めてしまうと、「なんでこんなことまでして、されなきゃいけないんですか、これプライベートなことですよね?」みたいなギャップも生まれてしまうと思うんですけどね。
逆に日本はそういうのでロイヤリティを保っているし、社員のモラルを保ってるからすごいなぁとも思うんですけどね。
アメリカはそうはいかんですよね、やっぱり。
後編では「クオリティの高い人材を雇用し、継続的に会社で働いてもらうにはどうしたらいいのか」このトピックで話していただきます!
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