Interview001 日本酒ビジネスで世界にでしゃばろう!アメリカNo.1 日本酒スタートアップtippsy!

日本酒で世界にでしゃばろう

インタビュー相手

伊藤元気 tippsy, Inc CEO

日本で大学卒業後、新卒で人材紹介企業に勤務。2009年より日系食品商社に勤務し米国ニューヨーク・ハワイ・ロサンゼルスに駐在。その後University of Souther CaliforniaにてMBA取得。2018年11月にロサンゼルスにて日本酒EコマースのTippsy,Incを創業。パッションは『メイドインジャパンを再び世界へ』。


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アメリカNo.1の日本酒eコマース!

ゆうき

でしゃばろうNippon!メディア、記念すべき1番最初のインタビュー!
アメリカで1番日本酒を展開しているeコマースであるtippsyのファウンダー&CEO 伊藤元気くんにアメリカでの起業についてあれこれとお話をお伺いしていきたいと思います。元気くん、今日はありがとうございます!
まずはじめに、tippsyについて簡単に紹介をお願いします!

元気くん

よろしくお願いします。
tippsyは日本酒のeコマースのスタートアップです。
「TippsySake.com」という何百種類の日本酒を取り扱うサイトを運営し、アメリカ全土で日本酒へのアクセスを可能にした会社で、日本酒のサブスクリプションのような形でテイスティングキットなども販売し、「日本酒のeducationを届ける」ということをミッションに事業展開をしています。

ゆうき

tippsyの立ち上げから今で3年と伺っています。立ち上げ前から今に至るまで、ざっくりとどんな経緯やステップがあったんでしょうか?

元気くん

元々僕はアメリカで日系の食品関係の商社に勤めていたという背景があります。
そんな中、まず立ち上げのきっかけは「日本人という特色を活かせることを考えたときに、日本に関係するものを売ろう」と決めたことでした。
登記した当時は、フルタイムで働きながら、MBAを取るためにビジネススクールに通うという生活をしていたんですが、そこで取っていた「起業家精神」という授業がとても面白かったです。
そのときにアイディアとして持っていたのが「日本酒のeコマース」だった。そして、その年の11月にローンチしたって感じですね。
最初は全部自分でやってた。Instagramを使ってどうすればコンテンツを届けられるか考えたり、ウェブサイトのデザインを自分で考えたり。

元気くん

立ち上げたばかりの頃は、友達の倉庫を間借りして、車であちこち回って商品をピックアップして、梱包・デリバリーなんかも自分でしてましたね。
2019年は、パートタイムの人に手伝ってもらいながら、ただがむしゃらにいろんな人に話をして、エンジェル投資家を見つけるという生活だった。
でも、すぐお金はなくなっちゃって。
2019年暮れに「やばいやばいお金なくなる」と思って、翌年の2月にアメリカと日本のVC から50万ドル調達できた。
そこから、ひとりふたりとチームメンバーが増えた。コロナのプッシュで、オンラインでアルコールを買う人が増えたことで、ボリュームとしてちゃんとした規模にもなった。
チームができて、ルールができて、会社のバリューができてみたいなところで、プロダクトマーケットフィットも見えてきたので次はスケールというのが今の段階です。

コロナを機に売上5倍! 日本酒市場に手応えを感じた転換期

ゆうき

元気くんがtippsyを始めてから手ごたえを1番感じた瞬間、「これはいけるぞ!」という転換期というのはいつどんなタイミングであったんですか?

元気くん

きっかけは、コロナでオンラインの需要があった去年の3月・4月頃ですね。
2020年は2019年との対比で売り上げが5倍になって。売り上げだけではなくて、業界の人たちから、「tippsyさんすごいね」と言ってもらえるようになったタイミングです。
例えば、有名な日本酒ブランドの社長に「イベントのキャンペーンをしたい」と声をかけてもらえたこと。それなりに業界の中で認知が出てきたなって思えた瞬間でした。

元気くん

あと、tippsyのミニボトルテイスティングキットを飲んだお客さんのレビューを見ると、「こんなにバラエティがたくさんあるんだ」「こんなにたくさんの種類があるのは知らなかった」「日本酒って楽しいね」といったコメントが増えてきました。
「今までは寿司と刺身しかペアリングしなかったけど、tippsyのサブスクでペアリングの幅が広がって、オイスターやロブスターと合わせて試した」というコメントをみたときなんかも、ミッションである日本酒のeducationを届けるというのが少しずつでも浸透している実感はありますね。

日本酒ブランドはまだまだアメリカ市場では知られていない…!?

ゆうき

僕なんかも日本酒マーケットについて素人でこう思っちゃんですけど、多くの日本の方は、「お酒ってアメリカでも結構認知されているんでしょ?」「海外でもよく飲まれているの?」といったイメージを持っているのかなと思うのですが…アメリカの日本酒市場っていったいどんな実態なんですかね?ぜひ聞かせてください。

元気くん


日本メディアでは、海外での日本酒の需要がすごいって言われてますよね。実際に、輸出量でいうと過去10年で2倍ほど伸びているね。
昔は”sake””sake” て言っていた人たちが、最近だと「吟醸」とか「大吟醸」と言うような人たちもいる。特にワインを飲む人達は、日本酒も当然のようにペアリングを意識して楽しんでいますよ。

ゆうき

おぉ、Ginjo とか Dai-Ginjoなんて言葉を話すんですね!?

元気くん

そうそう。でも一方で、アメリカで800人に日本酒の認知度についてのアンケートをとったことがあるんですけど、8割以上の人たちは日本酒を飲んだことがあるのに、ひとつもブランド名が出てこなかった。
日本側からしたら、すごい伸びているというマーケットの認知度が、こんなにも低い。なんかおかしいんじゃないのかという気持ちと同時に、ビジネスチャンスだと思ったんですよね。

ゆうき

なるほど。こだわりがある人たちは少しずつ増えているけれど、まだまだ市場全体としては日本酒のブランド認知には大きな機会があるわけですね。ちなみに、そんな中でもtippsyをすでにサービスとして選んでくれているアメリカのユーザーとは一体どういった方々なんでしょうか?

元気くん

日本料理屋で美味しいお酒を飲んで、それを買いたいって!となっても、アジアスーパーにもワインショップにもない。そこでオンラインで探してみた時に発見してもらえるのがtippsy。
tippsyはコンシューマーがワインを選ぶ感覚で、テイストのチャートやフレーバーのようなコンテンツを重視して作っている。日本酒に関するコンテンツを作り続けることで検索してくれる人がtippsyを見つけるという流れを作りたいと思っています。

ゆうき

なるほど、おもしろいですね。
市場に受け入れられていく過程を紐解いていくと、どうやってスタートしてどうやって世界で受け入れられたのかっていうステップが当然ありますよね。その中で、段階に応じてお客さんや市場を「educateする」というのがすごく大切なキーワードになってくると思ってます。
以前とある寿司職人の方と話したときに、「20年以上前は、手を使ってどうやって寿司を醤油につけて食べるのか」ということをお客さんに教えたところから始まったっていう話を聞いたのがおもしろくって。
それが日本酒においてもなにか似たようなプロセスがあるんじゃないかなというのを、元気くんの話を聞いていて思いました。「マーケットを育てる」っていうミッションを元気くんは持っているんだなって改めて伝わりました。

元気くん

食の歴史って面白いですよね。
アメリカ人からしたら、最初生魚は受け入れられなかったのが、カリフォルニアロールという最初思っていた形とは違った形で、寿司というものが広まっていった。
それって良いも悪いもあると思うけど、まずは単語を認知させていることから始まる。日本酒もSakeという名前は広まっているから、日本酒への理解が深まればワインみたいになると思っている。
そこで「うちがその市場を作っていく」って思っていますね。

ゆうき

すごくよくわかりますね、その話。
すし屋をやってる友達が先日、家の近くにある行列ができる米系のラーメン屋がとってもまずいんだって話をしていた。でも、そんなものでも行列ができるんだったら、だからこそビジネスチャンスがあるよねって。
「まずいのにこんなに並んでるんだから本物食ったらビックリするだろう」って。 僕ら日本人からしたらいまいちの味だと勝手に思ってたとしても、Ramenというものを世界に広く普及させてくれているところでも、価値は十分ある。
市場に広く展開するためのの存在がある中で、より高品質で「本物」に食いついてきてくれる一定の層がいるというバランスが成り立って進んでいくのが、日本酒にも共通するところがあるんでしょうね。

元気くん

本当にそう。
日本食・海外食に限らず、いかにconsumerをとれるかですよね。
例えば、今までの大量生産・大量消費という時代ではなく、サステイナビリティや企業のコンプライアンスに共感できるブランドをconsumerが自分で選ぶ時代
ある程度日本食が広まって、次は本場の物をとり
いれようということにバリューが出てくるんだなって。

アメリカでの資金調達チャレンジ真っ只中!

ゆうき

話を少し変えて、アメリカでビジネスをする中で元気くんがこれまでに体験してきた「ならでは」の面白さや難しさを、エピソードを踏まえてぜひ教えてください。

元気くん

直近の課題だったのが資金調達だったので、その点でいうと当然ながら英語でしなきゃいけないこと!母国語ではないから、苦労しているし今も学んでいます…。
資金調達については、ビジネススクールで学んだから仕組みが分かると思ってた。構成も分かるから、tippsyに置き換えてピッチを作って、たくさんのアメリカの投資家にピッチをしてきた。
でも、全然上手くいかない。
そんな時に、アドバイザーになってくれたアメリカの投資家がいて、その人にめちゃくちゃピッチのことをダメ出しされた。
「俺は投資したけど、お前にじゃなくて日本酒のマーケットが伸びるって知ってたから投資したんだよ」「日本酒のマーケットが伸びる確固たる証拠を投資家に聞いてもらえないと、お前がむしろ日本酒市場が伸びるのを妨げているくらいだ」って。

ゆうき

おおお。いい具合にフィードバックもらってますね。

元気くん

彼はストーリーテリングがすごい上手な人で、7.8.9をするために今1.2.3をするんだよって話を上手にする。今まで日本語でもできていないし、ましてや英語でも全然だからNOばっかりもらっていたんだって気づかされた。
聞かれたことにそのまま答えるのではなく、Tippsyがそこにどんな価値を与えるのかまで論文レベルでロジカルに答える。
本当にアートなんだなって思った。

ゆうき

それ質問なんですが、同じ立場の日本人だったら納得するものも、アメリカの人は違うというようなハードルや困難があったりするんですかね?

元気くん

あーいい質問ですね。どうなんでしょうね…
金融商品を買う・投資すると考えてみたときに、2,3倍になるくらいだったら株を買う。スタートアップに投資するなら夢でも100倍になるようなことを話せよっていうのは言われますね。

ゆうき

なるほど。これはもっと調査してみたいテーマですね。海外系のファンドや投資家から資金調達していくという日本の起業家や経営者は周りにちらほらいますし、今後増えるだろうなと思いますし。
それにしても、アメリカで仕事してる口が達者な人がすごく多いなっていうのは思いますね。「私はこれだけできます」って堂々と主張してくる。でも実際に蓋を開けてみたら口ばっかり。これはできるの内に入らないでしょ…みたいなことも多い気がして。

元気くん

それは確かに多いですね。

ゆうき

一方日本人は、そういう言い方をあまりしないんじゃないかなって。そもそものメンタリティとか前提となる、なにかが違うような気がする。
「ホラを吹く」というと大袈裟かもしれないですけど、アメリカ人の方がうまい気がするんだけど、どう思います…?

元気くん

それは違いなのかもしれないし、思い当たるところはありますよね。アメリカの教育では、学生の早い段階から多くのプレゼンやディベートの機会や授業があるからかもしれない。
今のピッチの話は最たる例で、プレゼンテーションは内容だけじゃなくて話し方やふるまい、使う言葉が重要ですもんね

幻想を抱き過ぎるな!?メインストリーム以外のビジネスポテンシャルとススメ。

ゆうき

新たに日本から進出、もしくは日本というコンテンツを取り扱ってアメリカでビジネスをしていく方々に対してアドバイスをするとしたら、どんなことですか?

元気くん

食品業界でアメリカに進出する場合、日本で成功しているブランドがそのまま海外でビジネスをしていこうという場合が多い。そこでよくチャレンジになっていることがマーケットに対する理解だと思います。
例えば米系のマーケットに入れたいのに、取り扱っている商社がそこのチャンネルを抑えていないなどの勘違いがあったりすること。

元気くん

一方でアジア系、アメリカは中国系のマーケットってすごいでかいじゃないですか。移民の歴史が長く、コミュニティもしっかりしている。そういったところを狙うのも方向性としては間違いじゃないと思う。
でも、アメリカだからメインストリームを狙っている人たちが多くて、うまくいっている人はあんまり見たことないなって印象がありますね。

ゆうき

なるほどね。メインストリームを狙いに行きたがる。でもそこの実態を全然つかめていなくて、やってみてもうまくいかないよねっていう。

元気くん

あと、日本で売れているからクオリティが高いからいけるでしょっていう人が多い。でも、こっちのCPGのブランドってそんな甘い世界じゃない。
アメリカのマーケットの調査も必要だし、consumerの意見を聞いて、お客さんを絞ってテストをしてっていう段取りが大切。それなのに、日本マーケットの延長としてやってるようなところがありますよね。
現地=こちらに派遣された人が、やれって言われたからやってますみたいな。

元気くん

お酒の会社の駐在員の人と先日話していて、「この商品を広めて」と本社に言われてその後は好きにしろと。スーパーに売るなり、問屋に行くなり。でも、どれもうまくいかない。そこで「売るものを変えたらだめなんですか?」って聞くと、「いや、これやれ」って言われているからって。あまりにもそれってみんなが疲弊するだけですよね。

ゆうき

まぁ、よくわかりますね。どうしても日本で成功している事例やパターンがあればあるほど、そのまま当てはめてみようと思いたくなるのは普通のことかと。さらにそこで、「アメリカ市場」に対しての実態がどんなものかを全くわからずに、先程の「幻想」のようなものだけを抱いてなんとかなると思っている人たちも多いんだと正直思います。

世界で一番日本酒のconsumerのデータを持つ会社に…!

ゆうき

最後に、ぜひ元気くんの野望を聞かせてください!

元気くん

野望…。自分たちは「マーケットプレース」でありながら、「世界で一番日本酒のconsumerのデータを持つ」会社になることですね。
そのデータを持って、アメリカのマーケットにフィットする商品を作ることもできますし。さらに、日本の良いものを売れる会社になりたいなと。
ついこのあいだ、ベンチマークにしていたワインのサブスクリプションの会社が上場したんです。250億くらいの時価総額での上場で、そういった形も可能性としてあるかなと。

ゆうき

ぜひtippsyを通じて日本酒をアメリカにますます展開して、日本の素晴らしさを世界に届けていってください!
今日は貴重なお時間をありがとうございました!!

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