今回のインタビューのお相手は、アメリカでスタートアップ企業NeuralX(ニューラルエックス)を創業、CEOを務める仲田真輝(まさき)さん。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で人工生命を作り上げる研究に10年もの間携わり、培った技術を世界へ貢献するため、日々挑戦し続けています。研究者であり起業家でもある仲田さんがどんな思いでここまで突き進んできたのか、お話を伺いました。
インタビュー相手
仲田 真輝 Neural X CEO
大学卒業後に株式会社インテルに入社。退職後、渡米しUCLAコンピュータサイエンス博士課程で「人間をシミュレーションする研究」/人工生命に従事。
Neural X(ニューラルエックス)を創業し、運動解析と生体力学的人間シミュレーションの技術に基づくオンライン・フィットネス・サービス「プレゼンス・フィット(Presence.fit)」などを展開。MITテクノロジーレビュー「Innovators Under 35 Japan 2020」 や「Forbes Next 1000 2021」に選出。
何か自分が勝てるものが欲しかった

まさきくん、今日はお時間いただきありがとうございます。お話しお伺いできるの、楽しみにしていました!



こちらこそです。



では早速ですが、最初にまさきくんの簡単な自己紹介お願いします!



高校まで、ずっと日本で生まれ育ってきました。大学で何やろうかなと思ったときに、漠然とした将来像しかなかったんです。
僕は、一般的に「進学校」と言われているところに通って、その後は有名な大学行って有名な企業に勤める、ということが当たり前の幸せとか成功した道って認識されていることに、すごく懐疑的なところがあって。
「幸せっていうのは何か」っていうのを考えたり「自分の人生で本当に何をしたいか」って考えたら、やっぱりそこじゃないっていうか、腑に落ちなかったですね。
その時、ロボットについてなんとなく興味がありました。
ロボットには「これから可能性がありそうだな」と思ったんです。だから早稲田大学に行って応用物理っていう分野を学びました。



「社長になりたい」「物理を学びたい」「ロボットやりたい」、と思いつくものは色々あって、でも本当にやりたいことがどれなのかわからなかったから、色々やりました。
大学の時には、まずは先輩の起業の手伝いをやって、会社を作るってことを学ばせてもらったんです。そこで「会社を作ること=幸せ」じゃないなって感じましたね。
会社を作ってお金が入ってきても、やってることがあまり面白くなかったんです。1年間ぐらいやったんですけど「会社を作る」「社長になる」ことゴールじゃないなって思いました。
その後にバックパックをして「世界を見たいな」って思うようになりました。
世界を旅行してるうちに「自分は小さなところで悩んでたな」と感じて、そこから海外に行ってみたいって思い始めましたね。
何か自分が勝てるものが欲しくて、それを作るために何をするかっていったら、世界のトップのところで自分を揉まなきゃいけない。



なので、そのときに興味があったロボットの分野を突き詰めていこうと思いました。
お金がなくてもビジネスできるのはどこかっていったら「ハードウェア」じゃなくて「ソフトウェア」のところなんですよね。
「ハードウェア」はお金が掛かるから「ソフトウェア」をやろうっていうことで、ソフトウェアはどこが凄いかっていったら、やっぱりカリフォルニア、シリコンバレーっていうのは知ってたから、アメリカ行きたいなって思いました。


人工生命を作り出す技術で勝負する



アメリカに来てからPh.Dとポスドクとして、10年ぐらい研究をやりました。自分の中では「人工生命を作り出す」領域で、研究者としては第一人者になれたというか。それが自分に課した目標だったんです。
でも「研究者になりたくてやっていたわけじゃない」とずっと思っていました。根底に会社を作りたいっていうのがあって。
10年掛かってしまったけど、ようやく技術が完成して、その技術をベースにNeuralXという会社を作りました。それが2019年。
先日、3年のアニバーサリーを迎えました!



おぉ!おめでとうございます!



「自分が勝てる技術で勝負をする」、その武器ができてようやくステージに立った、っていうのが、僕の今のステータスですね。
優秀だけではなく「自分から動く人」がいる環境



最初に言っていた「やるんだったら世界のトップで」っていう言葉なんですが、UCLA含めアメリカには実際どんな環境があったんですか?



自分から動ける人が多かったので、来て良かったなと思いますね。
「今このタイミングでなぜ来てるか」っていう目的があって、そこに対して今度自分で何をやらなきゃいけないのかを考えなければならない。優秀な人がただ多いっていうのは簡単なんですよね。
うちの教授は本当にもうハンズオフで、何もやれって言わないし、何もやらなくても、もしかしたら卒業させてくれるかもしれない。だけどやらないやつは、通常であれば他の教授は落としますし、クラスも落ちるんです。
でも、自分で仮説を立てて動いて、自分から何かを取りに行ったら必ず助けてくれるんですよ。でも何も求めなかったらもう目も当ててくれないというか。
自分から動ける人が多いっていうのが、この国の強いところかなと思っています。



アメリカと日本の環境の違いは、どう感じたり捉えられていますか?



学校教育の中でやっぱり発言しなかったら、いる意味もないと思っていて。その中で発言して、でもよくよく聞いてみると大したこと言ってないんだけど、でも動くんですよね。日本は出席とったらオッケーみたいなのあると思うんですけど。
動かなきゃいけない、自分を見せなきゃいけないっていうのがずっと教育の中にあって。「優秀優秀」って言うんだけど、別にそこまでみんな能力って変わらないと思うんですよ。
じゃなくて、「ゴールを考える」能力と「見せる」能力、「動く」能力が、アメリカの人はあるのかなと思っているんです。
今の時代、特にソーシャルメディアがあって、データや情報がいっぱいあって、発信しなければ何をやってても意味がないと、まさにそういう時代ですよね。
アメリカの人たちは、どうやったら知ってもらえるかとか、どうやったら伝わるのかっていうのをすごく考えているから、これだけイノベーティブなものが生まれると思うんです。だから世界の中でも強いんだと。
でも、イノベーティブなものは日本でもちゃんと生まれていて。だけどそれが伝わってないっていうのは、日本のもったいないところですよね。
実際は能力は変わらないんだけど、「目的に対してどうやったら辿り着けるのか」「どうやったらそれが果たせるのか」っていうのを、教育現場で学んでいる。
世界のトップの人たちは、「伝える能力」がすごくあるなって感じています。



まさに、「でしゃばろう!」を、なぜやるべきなのか?を言っていただいて、ありがとうございます!



ああ、そうだね! そういうことですね(笑)


自分の主張を伝えることが壁だった



ちなみにまさきくん自身がそういった環境の中でストラグル(苦労)したっていうのは、あったんですかね?



あったあった。今でも後悔しています。
アメリカのUCLAのPh.Dに入ったときとか、自分のストーリーを伝えていたら、色々影響を与えられたかなって思うんですよね。
日本で育ってきたから、喚き散らして「僕、すごいよ」っていうのとか嫌で。「これだけできました!」みたいに主張するのは、「いやいや、ダセーな」みたいに思っていたんです。
日本ってハンブルなのがいい、謙虚なのがいい、だけどそういう価値観を色々変えてみると、偉そうに言わなくても、謙虚に伝えるっていうことをやっておけば良かったなとか。
自分の主張を伝えるっていうのは日本の会議ではやらないことだから、なかなかそこに対して最初はアカデミックなところでなれなかったです。
言語的な壁もありましたからね。



伝えることだったり主張するってことが上手くいかなかったり、足りなかったなって思った時期はあった…と?



やっぱり失敗するのが怖いからなかなか言えないっていうのがあって。
自分の発音のアクセントが理解してもらえない瞬間があって、それがすごく嫌だったんです、最初。
でもカリフォルニアに来てみてよかったのは、実はみんながアクセント持っていて、適当にというか、伝わればいい。そういった意味では自分のメンタルバリアを取ってあげると、そこの障壁は克服できる問題だったんですよね。
言うのは簡単なんですけどね。当事者になったら難しいかもしれないです。



そのバリアをどうやってクリアしていったんですか?
数だったり、実践するってことを自分に課していたんでしょうか?



場慣れですね。
発表する機会とか、機会があったら手を挙げて発言するとか、質問をするとかもそうだし、自分を俳優じゃないけど「アメリカ人になったんだ!」って。
「トップの人だったらこうやってやるな」とか、優秀だと思われたかったらこうやるなとか考えながらやりました。
これはオフレコかもしれないけど、最初はシラフじゃいけなかったからビールを1杯飲んでいました。(笑) プレゼンの前に緊張すると、舌回んないから・・・。
だから一杯やってからっていうのもやったけど、でもそれはお酒に溺れていたわけじゃなくて、リラックスさせるためにやっていました(笑)
人工生命の技術で最初に作りたかったもの



NeuralXの現在の状況と、どのフェーズにあるのかということを教えてもらえますか。



ようやく作りたかったプロダクトのひとつができました。究極のビジョンがあるのでまだ過程なんですけど、スタートアップだからビジョンに対してレベニュー(売上)を出さなきゃいけないと思ってます。
実績を出せば、それが資金調達に繋がる。1つ目のステップとしてのプロダクトがようやくできたのが、今のフェーズかなと思いますね。



基本的にNeuralXは技術の会社です。人や生物をコンピューターの中でシュミレーションして作る技術を持っているっていうのが我々のユニークなところだと思っているんです。
一番最初に何をやるかを考える時に、面白いことをやればいいんじゃなくて、川が流れているところに自分も流れていかないと、と思いました。逆流していくのはすごく大変なので。一緒に行くと一緒に流れていけるし、一緒にゴールに辿り着けるっていうのがあって。
2019年に創立した当初は、ヘルスケアやヘルスティック、フィットネスにすごくお金が流れていました。



当初は、人工生命を使ってアニメーションのリアリティを上げることを、ゲームや映画のプロダクションに提案しに行くアイデアもありました。
ただ、そこのマーケットキャップ(株式時価総額)は200ミリオンぐらいだったんですよね。200ミリオンの業務に対してやっても、シリコンバレーの勝ちゲームには入れない。っていうのは、マーケットが小さすぎるからなんです。
だったらビリオン級のやつをやらなきゃいけない。そこで、動作のシミュレーションができるから動作解析ができるだろう、だからフィットネスをやろうってことになりました。フィットネスだったら、リスクがほとんどないんです。
そうして何ができたかっていうと、フィットネスをオンラインでインタラクティブ(相乗効果)にやるっていうプラットフォームができて、そこをマーケティングで今後やっていきますっていうのが、去年の終わりぐらいにできたところです。
いいものがそのまま売れるわけじゃない



ただ、いいものを作ったら売れると思ってたんだけど、でもそれって技術者の一番やっちゃいけないミスなんです。ここは今後の課題。
話は聞いていたんだけど、でも当事者にならないとわからないんですよね。本当にUX的には自信がめっちゃあって、だけどマーケティングをやったてみたら、より良いものが売れるわけじゃないというのがわかりました。
売れるものって「このセレブが使ってます」とか、これだけ情報が多いから、何か引っ掛かるものがないと、マーケティングのコストや掛けられるコストの勝負になっちゃったりするんです。スタートアップとして、マーケティング費用はそんなに掛けられません。
いくらいいものを作っても埋もれてしまうというのがあって、今はそこがBtoC向けの限界っていうか、一応ユーザーはグロースしてるけど、爆発的に跳ねるわけではないんです。
そこで立ち返って思ったのが、うちはブランディングの会社じゃないし、マーケティングの会社じゃない、セールスの会社でもない。技術の会社だから、だったらブランドが強いところと組んでやる。



それが今やってることで、今は名前は出せないけど、LAとかニューヨークですごく強いブランドとパートナーを組んで、レベニューシェアのモデルで、ブランドは別に自分たちで作らなくていいじゃんという風に考えています。
技術の会社だから技術を提供して、オンラインのプラットフォームを、オフラインのジムとかブティックのフィットネスに提供してあげて、一緒にユーザーを、win-winをやっていこうというのが、実はBizDevでやっているところなんです。
そこに対してものが動き出して決まり出しているから、次のそういったビジネス拡大展開のフェーズに入ったかなっていうのが、今のNeuralXのステータスかなと思ってますね。
食のサステナビリティ!技術で世界を変えていく会社に



ただ、我々がやりたかったビジョンが10年後にあるって言ったんですけど、それはフィットネスの領域にはないんですよ。
だから別にここで終わるつもりはなくて、ここではレベニューを、なんらかの形で資金を作って、それを再投資して横展開していきたいんです。
横展開をするのに、技術を、先ほどのアニメーションやヘルスケアのリハビリももちろんそうなんだけど、いま他でやってるのは、魚の養殖業界に対してお魚をシミュレーションして、リアルな世界をシミュレーションの中で作るということです。
まさにメタバースっていうバズワードがあるけど、メタバースで作る、仮想現実をいかにリアルに使えるかっていうのが我々が考える究極のメタバース。マトリックスの世界ですよね。
AIが見られるデータを、コンピュテーショナルなところでやるのがいいのは、リアルタイムで人間の世界では時間って1秒は1秒なんだけど、シミュレーションの世界では人間の時間の1秒間に、究極を言えば100年分のシミュレーションができちゃったりするんです。
そういったことが可能になったり、人間がデータを採らなくてもデータを採れるような環境が作れる。
そういったところでお魚とか環境っていうのをシミュレーションして、養殖業界の人たちの今のマニュアルのプロセスを自動化するんです。
それによって生産コストを抑えるっていうのもそうだし、それは消費者にベネフィットになるし、あとは生産の環境っていう、数を数えて給餌の量を適切にコントロールしたりすることで、ちゃんと魚が育ちやすい環境にしてあげることが可能になります。



それによって生産を安定させれば、食のサステナビリティ(持続可能性)っていうことになりますよね。
これだけ環境問題があるから、嵐が来ちゃったら魚育たないとか、汚染で育たないとかってあるけど、やっぱり食をサスティナブルにやるためには、こういった技術を使って生産を次の段階を持っていくっていうところもやっているっていうのが、我々が、ステルスじゃないんだけどサイドでやっているところ。
ようやくそういった2個目のプロジェクトができるようになってきたから、これを2個目、3個目4個目って増やして、技術を中心に世界を変えていく会社にしていきたいなっていうところです。
アメリカにも「村社会」はある



コミュニケーションを、こっちの人たち、いわゆる投資家とかビジネスする人たちと行われると思うんですけど、そこでまさきくんが見るリアルとか、そもそも日本と感覚が違うところって、どういうものがあるか、実態はどんなものなんでしょう。



シリコンバレーもLAもやっぱり村社会っていうのはあって、いきなり一見さんで来て話を聞いてくれるっていうのはほとんどないんです。
本当に優秀な人、天才、イーロン・マスクみたいな方だったらあり得るかもしれないけど、一般庶民、僕とかゆうきくんとか、あ、ゆうきくんはわかんないけど(笑)。その 一般庶民がいきなり来て話を聞いてもらって、億単位のお金を投資してもらうなんてありえないんです。
無理じゃないんだよ? だけどやっぱり時間が掛かりますね。
でも逆に、トップの人を知っていたり、友達で紹介してもらったりする、信頼している人から紹介してもらったりすると、話が全然早く進むし、決定権がある人に辿り着くのが早くなるっていうのがあって、それがアメリカに来て一番びっくりしたことですね。自由の国だと思ってたから。



大丈夫、一般庶民です(笑)。「村社会」っていう言葉が出てくるのがすごく意外だなと思いましたね。



シリコンバレーとか見てると、出来レースっていうか、有名なベンチャーキャピタルがお金入れたらエグジットまで行けるだろうということで、何も考えないでノールックで入れてる人もいっぱいいるんですよ。
資金だけでパワープレイで上場させちゃうとかっていうのはあるし、そういったところではやっぱりコネクションってすごく大事だなって思っているんです。
僕の場合はPh.Dの間に会社作ったりもしてみたけど、自分が移民っていうのもあったし、言語の壁もあったので、そういったことをやる中で難しさはありましたね。
人との信頼っていうのは、彼らが強いのは中学校のバディがとか、高校で同じスポーツやっていて「アメフトやってました!」とか、あのバディが言うんだったらそれは信じるよみたいな、ビジネスで会っただけみたいな、大人になって会った人との信頼関係とは違うんですよね。
そういった意味では僕がやったのは、セコいかもしれないけど、自分でやるっていうことを諦めたんです。いい意味で。
自分が強いのはそこじゃなくて、技術はすごい自信あるし、人工生命という研究分野は、世界で考えても自分たちしかできないって思ってるから。
できないことを補おうと思っていて、それを10年掛けたら補えるんだけど、そうじゃなくて、人間の時間って24時間しかないんだから自分は強いところをやるべきで、弱いところは補ってもらえばいいと思ったんです。
自分の弱いところを補ってくれているのが、今の共同設立者で。彼はカルフォルニアのロサンゼルス育ちで、彼にいろんな人を紹介してもらうことで、資金調達やM&Aの可能性はかなり開けたと思います。
スケーラビリティが求められる



でも日本と違うのは、みんな知ってることだと思うけど、バリュエーションの違いっていうのがあって。見ているマーケットが圧倒的に違うんです。
ドメスティックでやろうっていうビジネスに対して投資したいっていう人がいないし、そんなんだったらつまんないから俺に話すな、みたいな。日本だったら、国内マーケットはどれぐらいなのかとか、それで上場できるのかってことになると思うんです。



でもアメリカの人は、シリコンバレーをベースにどうやったらスケールするのかとか、LAもそうだけどスケーラビリティ(拡張性)はどうなのかっていうところをすごく求められるから、それが高いバリュエーションの所以なんだなっていうのは肌で実感しましたね。
最初からスケーラビリティを考えてやっているから、ビジネスの選択をするっていう大事さ、これがスケールしないんだったらやらないとなります。



「ビジネスの選択をする」っていうのは、さっき言っていた「流れに乗る」みたいなことに共通することですか?



流れに乗るのもそうなんだけど、流れに乗る中でやりたいビジネスが、シリコンバレーのユニコーンになるとか、それが年商20億になるモデルだったらアクションを取ること自体が無駄なんです。
20億回せるようになるんだったらいいなって思うんだけど、普通に庶民で考えちゃうとね。だけどそこがゴールじゃなくて、やっぱり100億200億、1000憶ってしていきたいんだったら、そこに行けるのかどうか、それをちゃんと考えないといけないっていうのを感じています。
ビジネス決定、やれるモデルを考える上で非常に大事だなっていうのを、今ビジネスパートナーと話す中ですごく学んだことかなと思っていますね。
すべては「目的」と「手段」と「役割分担」



学んだってことは、まさきくんも元々そういう考えを持っていたけど、ビジネスをしていく中で常にそういう刺激を受けたり、枠をどんどん広げていく思考が当たり前っていう環境の中で、揉まれていっている気がする。



そうですねー。やっぱり環境によって変わるから、考え方は自然に変えてもらったっていう感じですかね。
元々はそんなに、すごく回せたら嬉しいなって思ってたけど、そうじゃなくて、やり方によっては全然今はまだ出してないからあんまり説得力のある感じで言えないんですけど。
100億を超えるビジネスは実現不可能じゃないなって、こっちにいてすごく肌で感じるし、やり方次第と、あとは何をやるか、誰とやるか、それが凄く大事だなって。



アメリカで良かったのは、自分で100%株持とうと思っていたけど、でも100%株持っていても、数ミリオンとか10ミリオンぐらいにしかならないんだったら、結局はインパクトやリターンがあまりなくなってしまう。
でも誰かとやっている、例えば50/50で持っていて、それが100ミリオンになったらそれは50ミリオンになるわけだし。だからアメリカはM&Aとかバンバンやってるでしょう?
それは自分が顔にならなくても、CEOを自分が降りるとしてもいいんです。そんなの表面上のものなんです。
だけど自分が本当に成し遂げたい世界はなんなのか、成し遂げたいゴールはなんなのかっていうところで、ゴールが一致したら合致して、みんなで大きくすればいいじゃんっていうのが、こっちに来てすごく肌で感じたところで、それも日々の中で学べたことです。



一貫して目的と手段とそのための役割分担で、手放すこととか、自分はここに集中するんだとか、誰かに任せることをどんどん明確にしていきながら、ゴールや目的に近付いているんだなっていう印象が、聞いていて改めて思いますね!



日本だと、それこそホリエモンと村上ファンドのときとか「敵対的買収だ!」「乗っ取られるぞ!」とか言ってたけど、そうじゃなくて、会社と会社が合体するのは別に悪いことじゃなくて、目的と利益が一致しているんだったら、どんどんやるべきだなと思う。


人工生命が世界をボーダレス・タイムレスに繋ぐ



これを読む人たちは人工生命の領域を知っている人たちと、全然わからない人たちももちろんいると思うんだけど、人工生命という産業でどんなことが起きているのかを、まさき君の言葉で教えてもらいたいです!



知能は生命のうちのひとつなんだけど、AIが一回ブームになりましたよね。今はWeb3.0とかNFTとかメタバースが来て、AIはそんなに言われなくなってきたけど、実社会に出てきたものもあるんです。
なぜAIからメタバースに興味が移ったかっていうと、AIの限界というか、「AIって嘘じゃん」っていう人も出てきたし、ビジネスマンが適当にAIって言って、何ができるかわかってもいないのに「これができます!」とか言っちゃって、資金調達して失敗したって例も実はいっぱいあったんですよね。
僕から言わせたら、今の人工知能は、知能とは本当にかけ離れているんです。
人間の脳の仕組み、元々はニューラルネットって、ニューロンのシナプスが発火するとかそういったところから取ったんだけど、でもそれ以降のディープランニングとかは、人間の脳って全然ディープな階層構造はしてないんですよ。むしろ結構浅い。
簡単に言うとそこの仕組みが、人間や生命とはかけ離れた方向に行ってしまっている。仕組みが違ったら、それが出せるパフォーマンスも絶対に人間にはならないんですよ。それが今なんです。



なるほど。もとは人間や生命に近づけるために作られた人工知能なのに、今では人間の知能の仕組みとはかけ離れたものになっていってしまってるんですね。



だからメタバースが出てきて、僕は凄く面白いと思うし、フェイスブックがやってくれたおかげで、世間の人々の興味を惹きつけて「なんか起きるかも」っていう感じでメディアも注目するようになったんです。「メタバースってなんだ?」みたいな
メタバースっていうのがあるんだって世の中が知ってくれたし、仮想現実や仮想世界に資金が流れるようにもなった。



それを見て思うんだけど、今の世界って「ディセントラランド」とか「サンドボックス」が、メタバースのパフォーマーとして結構長くやってるところがあるんです。
でもそこらへんのアバターとか、あの世界が全然僕にとっては面白くないんですよね…。キャラクターの動きも全然リアルを感じないし、例えばアバターを押したとき手がアバターを突き抜けちゃうんです。
そういったところに物理的な互いの反応もないし、作用・反作用の法則で、何かを押したら何か力が返ってくるっていうのもないから、物理も入ってないし生命も入っていないと感じてしまうんですよね。
今はみんなが知らないまま、「エキサイティングになるんじゃない?お金の臭いプンプンするよ!」ってやってるけど、1回そこで失望が起きると思ってますね。



今までは旅行をしたりするのに費用と時間をすごく使っていたと思うんです。
それこそ人間が外に出たり、なかなか地球の裏側の人とはコミュニケーションが難しかったんだけど、あの世界が本当に実現すれば、それがボーダレスにタイムレスに繋がれる世界になると思います。
でもそれをやるには人工生命の力が必要だと思っていて、それがようやく動き出してくれるかなっていうのが今の段階ですかね。



仮想現実の世界が実現したら今よりもっとボーダーレスに世界と繋がれるということですね。すごい!
実現されるタイミング的には、もう目前まで来ているんでしょうか?



僕らは研究の世界ではずっとやっていたけど、商用化するニーズが、潜在的にはあったんだけど顕在化してなかったから、そこに対してプレーヤーが少なかったんです。
人間とゲームの中のキャラクターのインタラクションとか没入感はあると思うんだけど、物理的なアニメーションが必要だねとか、環境ってもっとリアルに見守るべきだよねとか、相互キャラクターの動きを出すためにこのキャラクターをもう少し賢くしなきゃいけないよねって人々が感じ始めているのが今だと思うんです。
そこに人工生命とかの必要性っていうのは見てもらえるようになったのかなって感じますね。技術的にはようやく卵ができたみたいな。
まだ生まれたてでもないし、これからその世界が実用化っていうか、実現していくのにはまだ5~10年のスパンがかかるなっていうのは思っています。ただ全然できてないことだからすごく面白いなって思うんですよね。



世の中見回すと、レストラン業なんて、もうたぶんやりようがないじゃないですか。面白いことをやろうと思ったら。
これからレストランをどうしようかなっていっても、もうやり尽くされた感じがあるなって感じるんだけど、こういった仮想の中でできていることって実はまだないんです。
人工生命がこれからの仮想現実の中では必要な技術になって、世界を革新的に変えられるようになっていくって、自分のバイアス的な見解かもしれないけど、思ってるところですね。
自分しかできないもので誰かに笑ってもらう



まさきくんの今後の個人的な野望としては、どんなものがありますか。



自分しかできないもので誰かに笑ってもらうとか幸せだとか驚いてもらうとか、そういったことをやりたいっていうのが、一番の野望ですかね。
これは自己満足で、自分が幸せを感じたいからビジネスもやってるし、それが大きければ大きいほど、すべての活動のエネルギーになってます。
今やっている人工生命は我々にしかできないし、自分が第一人者としてやってるっていうのもあるから、その技術を使って世の中にもっともっと色んなことをしていきたいんです。
今言ったメタバースの世界もそうだし、人工生命ができることで、養殖業界に対する技術提供であったり、アニメーション業界やゲーム業界に対する提供、究極は人間をシミュレーションできたら、人間を理解できるようなシミュレーション上でのテストベッドができる。
そうすると医療系の、リハビリのアナリティクスにも使えるし、神経的に問題がある人に人工生命っていうのがあって、その人にこうやってみたらいいかなとか、新しい手術の手法とかを生み出すためのシミュレーションもできる。



人工生命という、まさき君たちにしかできない技術で、多くの産業に関われるわけですね。



究極の野望、研究者としての野望は、生命をコンピューターの中で作り出すこと。
経営者としての野望は、誰もできない技術で世界をひとつずつでいいから変えていくこと。
繰り返しになるけど、アプリケションレイヤーはなんでもいい。
それが自分の野望であり、やり方です。



かっこいいですねー!ホレてまう!(笑)
世界へチャレンジしたい人へ、伝えたいメッセージ



最後に、日本人が謙虚であるという話もあったけど、技術でチャレンジしようとしている人に、研究者としてもビジネスでもチャレンジをしているまさきくんが、日本でビジネスをしている、ないしはこれから世界でやりたいなって思っている人たちに届けたい言葉はありますか?



主に自分よりも若い人に対してだけど、今はある意味なんでもできるようになったし、ディッセントラライズ(分散化)とか、CtoCとか、ファンエコノミーがあって、ユーチューバーもそうだけど、個人で何かができるような時代になったし、個人で発信して届くような時代になったのは、すごく恵まれた世界だと思うんですよね。
コンピューターとかソフト、アプリケーションだったら資本がなくてもできるような時代なので、チャレンジすることをリスクと思わないでほしいんです。むしろチャレンジしないことがリスクで、大企業におんぶにだっこで良かったのはもう過去の時代って思ったほうがいいと思います。
冒頭で言ったけど、優秀な大学行って優秀な会社に行って一生安泰っていう時代はもうないと思うし、日本の国際競争力がこれから続くかっていったらちょっと厳しいな、とは海外に来て思うんです。
安泰とか安定志向、俗に言われている安定っていうのは安定じゃないっていうことに、まず気付いたほうがいいと思います。



うんうん。
それはすごく感じますね。



あとは動くことによって失敗することをリスクと思う人。失敗イコール、リスクだと思うかもしれないけど、失敗はリスクじゃなくて、失敗をしたときにどう転ぶかを想定していくことでリスクを抑えられる。
うちの場合は、資金調達をすることで資金的なリスクをヘッジさせてもらっていたり、色々なリソースがあるから、それを使えばチャレンジができる。ほとんどノーリスクでチャレンジできるような土俵があって、やりたいことがあって、何となくやりたいんだけど怖いなって思っているなら、実はやらない怖さのほうがあるんだよっていうところ。
動いていれば、その瞬間失敗して恥ずかしいなとか、嫌だなと思うかもしれないけど、そこから学ぶこととか、そこから失敗した経験、アメリカに来て思ったのは、失敗した経験によって、失敗してないやつよりは「こいつ学んだな」って思ってくれることなんです。



それはスタートアップでも大企業でもそう。
何もやってこなかったやつのほうがすごく怖い、動かないのが一番のリスク。
若い子はやりたいことが見つかっているなら、本気でやる。中途半端が一番ダメ。親に言われたから大企業でやるとか、なんとなくいい大学に行くとか、やりたいことがないんだったらそれはそれでしょうがないんだけど、でもそれが見つかっているのなら、リスクヘッジのためにチャレンジをするべきだなっていうのが、伝えたいメッセージかな。



いや、まさき君、本当にかっこいい!!



乗せるの上手いね(笑) ありがとう!
じゃあ、ちょっと、一杯行こうか?(笑)




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