Interview005 とりあえず「世界」を経験してみよう!日本を飛び出しイタリアで靴職人に…そしてアメリカでは留学支援企業の社長…!?

学生は世界を経験しろ

今回は、日本の学生へのアメリカ留学とインターンシップを支援する事業を展開しているライトハウス・キャリアエンカレッジ代表の古茂田(こもだ)さんにインタビュー。日本ではリクルートに勤められていた古茂田さん。退職後にイタリアで靴職人としての修行を経験した後、何故アメリカに来て日本人学生を支援しようと思ったのか。3つの国を経験して初めて見えてきた「海外から見た日本」を話してくれました。

インタビュー相手

古茂田 和明 ライトハウス・キャリアエンカレッジ プレジデント

大学卒業後、株式会社リクルートに就職。進学事業・リクナビ・飲食事業などを経験して、退職後、紳士靴ビジネスを起業するため、イタリアにて靴職人に弟子入り。その後、リクルート時代の同期の声かけにより米国ロサンゼルスへと移住。ライトハウス・キャリアエンカレッジ プレジデントに就任。日本の学生へのアメリカ留学とインターンシップを支援する事業を展開。

ゆうき

古茂田さん!今日はお忙しい中お時間を頂きありがとうございます!

古茂田さん

古茂田和明です!今日はよろしくお願いします!

Table of contents

日本の大手会社とアメリカでのビジネスの意外な共通点とは?

ゆうき

それではまずはじめに、古茂田さんが今までにどういった経験をされてきたのか経歴を教えてもらえますでしょうか!

古茂田さん

はい。1997年に大学卒業後、新卒で4月に株式会社リクルートに入社しました。主に営業職、企画の仕事をして、後半はマネジメントをやっていました。リクルートの在籍期間は15年半くらいですね。

入社当初は、進学事業といって、高校生が大学や専門学校を選ぶ時のための進学情報誌をネットで扱う部署でした。その次が、皆さんが想像しやすい、いわゆる人材系の「リクルート」って仕事で、新卒採用のための新規事業を作っていました。当時で言ったら「リクナビ」ですね。
その後はホットペッパービューティーなどの飲食事業を経験してから、リクルートを退職しました。それが2012年9月末です。翌年の2013年1月からは、イタリアと日本を1年9ヶ月、行ったり来たりしていました。

何でイタリアに行ったのかというと、イタリアの靴を日本でオーダーを貰って、イタリアの職人に発注するというビジネスをやりたかったんです。

ゆうき

なるほど。イタリアに行かれたその当時、海外で喋れる語学力があったんですか?それとも、語学力は無いけど海外進出したくて、とりあえず行ってみたって感じですか?

古茂田さん

最初は何も分かりませんでしたね。なので語学学校の学生からスタートして、靴の作り方を習いに行き、一方でどうやってビジネスをしようか考えていました。

そのビジネスの準備として、プロトタイプを友達に1足2足作ったところで、今のロサンゼルスの会社に「一緒にやりませんか?」と声掛けされました。

それで、2014年10月頃からロサンゼルスに来て、実際にビザも揃って本格的に動き出したのは、翌年の2015年2月です。これが経歴ですね。

今は日経情報誌を作ってるライトハウスという会社の子会社で、ライトハウス・キャリアエンカレッジUSAという会社のプレジデント、つまり社長をやっていてます!!

ゆうき

なるほどなるほど。古茂田さんは最初、リクルートで教育事業をやっていた経歴がありますが、それは今やられているお仕事との繋がりはどんなことがありますか?

古茂田さん

繋がりはありますね!当時、入社してから8年間はずっと進学事業の営業だったんですよ。だから、高校生をリクルーティングするために、大学とか専門学校の入試広報課みたいなところに営業に行ってたんです。

今は研修事業で大学を通して学生を募集することがすごく多いんですけど、大学の窓口の方のスケジュール感とか仕事のスピード感とかの事情が分かりますね。一言でいうと固い組織なので大変なんですよ・・・。稟議書回したりしないといけないので。

なので、マーケットの規模はリクルートの時に学べたのがすごく影響しています。

ゆうき

今は研修事業を手掛けているということですけど、古茂田さんがこの事業に関わりはじめてから今までにどういった経緯があったのか、簡単に古茂田さんのビジネスについて教えていただけますか?

古茂田さん

僕がアメリカに来た当時は、ライトハウスでマガジンのお仕事をやっていました。そのときに聞いた話は、ライトハウスの創業者は、20歳前後くらいでアメリカに来て、そのとき日系の先輩方にお世話になったから、同じように日系の若者にアメリカを見せて何かを感じて学んでほしいと思ったのがきっかけだったみたいです。

それで、僕が今取り組んでいるのは、日本にいる18~22歳の学生にアメリカに来てもらって何らかの教育研修を受けてもらうっていうことを、今の会社の国際教育事業で取り組んでいます。

研修は多岐に渡っていて、1ヶ月ほど企業でインターンシップをさせてもらうこともあります。

他には、日本から来た美容学校の学生が、ハリウッドで現役で活躍しているプロのメイクアップアーティストから特殊メイクのやり方を教えてもらって、学生が実際にやってプロに評価してもらう、ということもやったりしてました。

ゆうき

へぇ~!学生にとってはすごい貴重な経験になりますね!
日本だけで勉強していると、そんな経験なかなかできないですよね。

古茂田さん

そうですね。コロナ前まではそういったことができていたんですけど・・・。
コロナが流行ってからは直接アメリカに来られないので、オンラインで海外の人と仕事をする形で、経験の場を作っています。
全部の代替を出来ないので、今は渡航の再開を待つのみですね。

ゆうき

確かに、オンラインだとどうしてもできることが限られますね。
コロナ前と今では、研修を受ける学生の数に変化はありましたか?

古茂田さん

コロナ前もコロナが流行ってからも、年間で1000人前後の学生に何らかの研修を受けてもらっています。

ゆうき

そんなに大きな変化は無かったんですね。
さっきメイクアップって話がありましたが、他にはどんな企業がインターンの受け入れ先にありますか?

古茂田さん

ジャンルだと、美容・スポーツビジネス・テック系がありますね。最近だとテック系の勢いがすごくて、会社がシリコンバレーから近いので、実際にシリコンバレーに行って現地で働いている方とか、起業家や投資家の話を聞いたり、ワークショップみたいなことをします。
あとは、日本の大学とか専門学校と話をすると「こういうことをしたい」って希望を言ってくれるんで、「我々が探してみます!」みたいな感じなので、ジャンルは結構幅広いですよ。

ゆうき

おー、興味深い!ちなみに、その中でも変わったジャンルのインターンはありました?

古茂田さん

ありました!変わったところだと、医療福祉とか、子供の教育ですね。あとは、アニメ・漫画とかありました。
日本で学んでいて、アメリカで自分の作品を実際に展示販売してみるとか、結構幅広くやってます。

ゆうき

面白いですね!
ちなみに、受けれてくれる企業は日系の企業だけですか?
それともそれ以外も受け入れてくれます?

古茂田さん

日系以外もありますよ。それこそ、「話聞かせてください」とか「2時間ぐらいお邪魔させてもらえますか?」は、現地のローカル企業の方が多いです。
インターンを1ヶ月受け入れるのって結構負担だし、就業環境の習慣の違いがあったりするじゃないですか?
ビザがないから働かせちゃダメだけど、インターンは無給だから労働なのかっていう法律の解釈が分かれるところがあったりするんですよね。
なのでアメリカの企業はそのへんは慎重ですね。
一方、日系企業だと、日本の学生がゆくゆく海外に出るステップの一歩として、アメリカで貴重な経験をすることに共感を頂いて、協力してくれるところも多いです。
なので、協力してくれるのはやっぱり日系が多いのかなって感じですね。

ゆうき

なるほど。今の話をまとめると、日本の学生に海外を体験してもらう機会を教育という形で提供する、それが古茂田さんのミッションになるわけですね。

古茂田さん

はい、その通りです!

日本の学生はこの7年で大人しくなった、でも”勢い”が欲しい

ゆうき

古茂田さんが今の会社で学生を支援しはじめてから、古茂田さんが感じる「トレンド」ってあったりしますか?

古茂田さん

まず、この事業に携わった7年前と比べると日本の英語教育って進んだなって感じます。

ゆうき

へぇー、そうなんですね!

古茂田さん

アメリカの学生と日本の学生が英語で半日間あるテーマについて話すディスカッションみたいなことをずっとやっているんです。
そのディスカッションで、7年前は英語が通じないってことが起こり得るから、例えばUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の学生とディスカッションしますっていうときに、アメリカ人の学生だけじゃなくて、日本からUCLAに留学に来ている学生を必ず一人は通訳としておくようにしていたんです。
でも、日本人同士だと、日本語で会話しちゃって「この時間は日本語じゃなくて英語で話すんだよ」って注意をするシーンが結構あったんですね。
今はもう注意することもなく、みんなちゃんと英語で会話してます。
シャイな子と積極的な子の違いはありますが、明らかに注意する回数は減りましたね笑

ゆうき

そこの違いは結構顕著に出るんですね笑

古茂田さん

そうですね。だから、日本の学生が英語を使えるようになってきているんだなって思いました。
一方で、真面目な学生がすっごい増えていて、それは全然いいことなんですけど・・・。
「おいおい、思い切りがよすぎてこっちがハラハラするわ!」ってのは昔の方がありましたね。推奨しているわけじゃないけど笑

ゆうき

元気過ぎて手が付けられないパターンもありますからね。笑

古茂田さん

そうなんですよね笑
「これやってよ」ってお願いすると「何で?」って答えるんじゃなくて、「ハイ、分かりました」って答える素直な子が増えてきたのは事実で、それはすごくいいことなんです。
だけど、もうちょっと元気でもいいのかな?と思ったりもします。

ゆうき

さっき古茂田さんが話してくれた「ライトハウスの創業者は裸一貫だった」みたいな「エイヤー!」っていう勢いが欲しいってことですよね。

古茂田さん

学生のそういった勢いとかって、日本社会が元気あるかないかの1つのバロメーターになるんですよね。
30年前にアメリカに来た人たちって、そのエネルギーとかパワーがあって、なんとしてもアメリカで食らいついてアメリカンドリームを手に入れるって感じだったんですよ。うちの会長もそうだけど。
そういうのは、今の学生からは感じにくくなったなって思うわけです。 

ゆうき

良くも悪くも落ち着いたって感じですね。

古茂田さん

そうですね。アメリカに行きたい学生は、日本全体の学生を見ていると二極化していると感じます。
海外に行きたいっていう望みや志がある学生も一定数いるけど、別に海外に行きたいと思わない学生も明らかに日本に存在していますよね。
この意識の格差が大きくなってる気がするんです。

ゆうき

日本の学生は何で海外に行きたいって思うんですかね。どういった背景や思いがあるのか、古茂田さんはどう思いますか?

古茂田さん

さっき話した「大人しくなってきている」っていうのもあると思うんですけど、ウチにインターンに来ている学生の7~8割は、「ゆくゆくは日本に拠点を置いて海外と仕事をすることが増えるだろうな」とか「海外に駐在の事業を置くことがあるんだろうな」って考えているみたいです。
色んな仕事がワールドワイドになって日本だけで完結する仕事が無くなっていくって学生のみんなもわかってるから、それに対応しないといけない
よねって思っているんじゃないですかね。

ゆうき

へぇ~。
学生のみんなも結構頭を使って、自分たちで考えているんですね。

古茂田さん

でも学生のその考え方って現実的で、「裸一貫で成功するんじゃい!」っていうエネルギーや夢があるんじゃなくて、「英語を使えないと将来しんどいんじゃないか?」って思ってるんだと思います。
「アメリカに住みたいの?」って聞くと、「選択肢にはないけど、今のところは駐在員のイメージです」って答えてました。
日本から海外に来て、駐在で数年海外に住むのは面白そうだと思うらしいんです。
そこらへんが、大人しくなったなぁって感じる部分でもあるんですよね。

ゆうき

そうは言いながらも、僕は学生が海外に来るのは素晴らしいことだと思います。
5年後10年後に大きな決断をしようと思ったときに、若い時に海外を見た経験があるからこそ、その決断に対してのハードルが下がったり、日本を離れて行動するっていう、きっかけの1つになると思うんですよね。

古茂田さん

僕もそれは本当にその通りだと思います。
海外を経験していて選択しないのと、知らないから選択しないのは、大きな差があるんですよね。
これは僕の経験でもあるんですけど、元々イタリアでやっていたけど、「アメリカでやらないか」って話を頂いたときに、「その内容ならやる価値があるな」って思ってアメリカに行きました。

ゆうき

今の情報社会だと、色んなもののアクセスが本当に良くて、世界中のどこでも情報を知れる状況ですけど、一方で、僕はまだまだ日本にいる方々にとって外の世界って、近いのか遠いのか分からない存在のような気がします。
日本の中で守られているし、物事が成り立つから、あえて外に飛び出さなくてもいい状況だと感じているんじゃないかと思いますね。

古茂田さん

確かにそうですね。
それでも自分が外に出てみたら「あぁ、そういうことか!」ってわかることもありますし、百聞は一見に如かずではないですけど。
外から見ていたらクローズして成り立っているのは、よく言われる「ガラパゴス化」ですよね。

ゆうき

一概にどっちがいいとは言えないんですけど、古茂田さんが仰った「そもそも選択肢に入らない」っていうのは、あまりにももったいないですよね。

古茂田さん

だから、「ちゃんと1回見た方がいいよ!」って思いながらこのお仕事をしています。

アメリカの経営者はアグレッシブ!?

ゆうき

古茂田さんは、日本にいるときはリクルートで企業向けにビジネスをされていたので色んな経営者の方を見てきたと思うんですけど、アメリカの経営者と、日本の経営者にはどんな違いがありますかね?

古茂田さん

リクルートの時は中小企業向けに営業をしていて、今僕らがインターンをさせてもらってる付き合いがある企業は、日系中小の割合が多いんです。だから、企業規模で話が変わるとは思うんですけど、アメリカで企業を経営している人は、何かしてやろうと思って自分で日本から出てきた人たちだから、アグレッシブですよ。日本の中小企業の経営者は、自分たちで会社を興しているからもちろんエネルギーはあるんですけど、わざわざ知らん土地に来てるし、自分の国じゃないから法律とか商習慣が違うなか苦労してるし、だからこそレギュレーションに囚われないんです、法律的にちょっとやばいですねみたいなことも含めて笑
日本だと元々法律とかレギュレーションに則ってやっているから、洗練され過ぎてなくて面白いんですよ。

ゆうき

確かに、アメリカの経営者はサバイバル力が高いなって、僕も何となく感じます笑

古茂田さん

そうそうそう笑
創業して何十年も経つのに、そんな急に路線変更しますか?みたいな・・・。
この間までオーガニック野菜作ってたのに、マリファナが合法化された途端にそっちに手出したりして。
さすがに日本は非合法だから、そこにインターン行かせられないなと思って、泣く泣くしばらくお休みしますってこともありました。 

ゆうき

話を聞く分には面白いですね笑

古茂田さん

あとは従業員も含めて、日本よりも権利意識がはっきりしてるし、バックグラウンドや人種が云々もあるし、アメリカは多様じゃないですか。
日本はいくら多様性を謳ってもまだまだ単一感があるんですよね。
アメリカは多様性に対するコントロールが上手というか、意識して対応せざるを得ないと思うんです。
業務時間もハッキリしてるし、空気読んで残業みたいなこともない、その代わり従業員の人が勝手にやってますよねみたいねこともありますけど・・・。
中小企業とかの家族経営的な一体感は日本の方があるかなとは思うんですけど、臨機応変さだったり色んなものを受け止めてまとめる力があるのはアメリカだなって感じます。
あとはアメリカに来る前は、同族意識が中国人に比べると日本人は弱いなって思ってたんですけど、実際に来てみると見方は変わりましたね。
日系同士で助け合いたいとか、そういった結びつきはちゃんと存在していますね。

ゆうき

なるほどなるほど。ここでちょっと話を変えますね。
僕は今30代なんですけど近い年齢の日本人が全然アメリカに全然いない気がするんですよ。
古茂田さんが知ってる範囲だとどうですか?

古茂田さん

駐在員として来てる方には若い方もいるんですけど、「こっちで一旗揚げるぜ!」みたいな人にはなかなか出会わないですよね。
日本の企業から海外に来る人って、支店長クラスしかいないじゃないですか。
だから、ゆうきさんの世代は駐在員がいっぱい送られてくる年代ではあるけど、グリーンカード(移民ビザ)が取れるか取れないかみたいな問題もあるし、人が少ないって問題もあると思います。
明らかに日本からアメリカに流れてくる人の数が減ってるし、そもそも日本人の人口が減っているのに、急にロサンゼルス行きたいってなる人のパーセントが増えるわけじゃないですしね。
なので、昔からアメリカにいる人の割合が多くなるし、同年代が少ないのは当たり前で、比較的高齢の方々が頑張っているなってすごく感じますね。

ゆうき

そういった背景があるんですね、確かに上の世代の方々が多いなとは感じていました。
若い人が来る機会が少ないと、他のアジア諸国にも負けそうな気がしますね・・・。

古茂田さん

ほんとにその通りです・・・。
若い人がもっとアメリカに来ないと、日本の未来が先細るじゃないですか。プレゼンスを見ても、他のアジアの国の方が明らかにプレゼンスは強くなってますよね。
昔だと、日本はプレゼンスがこっちでもすごかったのに、今は日本語の看板とかロサンゼルスじゃあんまり見ないじゃないですか。
そういった部分で言うと、やっぱり若い世代が減ってるなって感じますね。

ゆうき

古茂田さんが仰ったように、中国系や韓国系の企業って同族意識が日系より強いし「何かやりましょう!」ってなったときに、全面的に支援するネットワークが強力なイメージですね。

古茂田さん

うんうん。確かにそこは日本の弱点だけど、そうは言ってもお互い助け合うコミュニティはちゃんとありますよ。
それは僕が誤解していて、認識が変わったところです。

ゆうき

古茂田さんが仰った、「裸一貫」や「一旗揚げるぞ!」って勢いでアメリカに来た方の世代が、僕たちより年代が上の方が多くいるのはよく分かります。
そういう勢いがまた日本に起きないと、アメリカに来る日本人のプレゼンスが下がる一方じゃないかなって懸念はありますよね・・・。

古茂田さん

僕の知り合いで年齢は若いんですけど、アメリカで会社を興して資金調達して従業員雇っている子がいるんですよ。
こういう人がもっと増えるといいなと思いますね、他力本願で申し訳ないですけど笑
そのためにも、「アメリカに行ったことあります」とか「アメリカ面白そうです」って思う人を増やさないと始まらないから、最初の興味の動機付けを我々の事業でやりたいなって思ってるんですよね。

ゆうき

やっぱり若い時に海外を経験することで、将来的に選択肢のなかに海外が入るんじゃないかなと、僕も思います。
重要なのは早い段階で種まきをすることですね。

古茂田さん

それはね、文科省の人も言ってました。
滞在日数とかは関係なくて、海外にある一定の年齢まで行ったか行かなかったかが、その後の海外に出るか出ないかの分かれ道になるらしいんです。
だから若年のうちに行かせることが大事だって言ってましたね。
なので僕たちが今話してた方向性は間違ってないんだろうなって思います。

ゆうき

なるほど、僕たちの頑張りも必要ですね。
そういえば、古茂田さんって2回ぐらいイタリアに行ってるじゃないですか。
古茂田さんの同世代って、海外でチャレンジをする古茂田さんを見てどんな反応をしますか?

古茂田さん

周りの人が僕を見てどう思うかってことですか?

ゆうき

そうです。
というのも、僕もいまだにアメリカで経営をしてましたって話をすると、「アメリカで!?すごいね!」みたいな反応になるんですよ笑
これを聞くとやっぱり、海外で何かをすることに対するハードルみたいな、心理的な距離感がすごくあるんだなって感じたんですよね。
なので、古茂田さんの周りの方はどんな反応をするのかなって気になったんですよ。

古茂田さん

それはありますね!笑
みんなやったこともないし、見たこともないからその反応になるんだと思います。
僕も周りから「すごいね!」って言われるんですけど「やってることはそんなにすごくないよ?」っていつも思ってます笑

ゆうき

ですよね笑
すごいって言ってもちょっと場所が変わっただけですもんね。 

古茂田さん

そうそう笑
ある程度の人員は必要ですけど、日本でやってたことを応用してるだけですし、それこそウチなんて日系企業だし、めちゃくちゃ大変って訳でもないです。
日本人が海外を苦手意識するのって、知らないから怖いのもあるし、知らないから海外で頑張っている人を見るとすごいと思うんじゃないかな。
それでも僕は「実際にアメリカ来たらできますよ!」って思います。

ゆうき

はいはい。それって、リクルートをやめる時も、同僚とかはそんな反応でした?

古茂田さん

いや、リクルートの人たちは「頑張ってねー」みたいな感じでした。でも、今関わりがある大学や専門学校の先生方からは「よくそんな安定した職場を捨てましたね!」って言われます笑
自分の中ではずっとリクルートでやろうと思ってなかったし、やりたいと思った仕事がアメリカにあったから来ただけなんですよね。
でも周りからはそう見えてるんだなって、その時に初めて思いました。

「やればなんとかなるでしょ!」初めての海外でも自信があった理由とは

ゆうき

古茂田さんのキャリアって、改めて考えるとユニークですよね。
イタリアで、しかも靴職人って、最初聞いたときどういうことだろうって思いましたもんね笑
それで気になったのが、海外に行くときにハードルを感じなかったのかなって思いまして。
古茂田さんがリクルートを辞めてイタリアに行くぞってなった時に、海外に行くことに対して心理的ハードルは感じましたか?

古茂田さん

あんまりなかったですね笑

ゆうき

そこがまず不思議なんですよね笑
それまでに海外経験があったんですか?

古茂田さん

ないです!笑
リクルートって一定の年齢になると辞める人が多くて、元々100人程いた同期も、僕が辞めるときには30~40人ぐらいまで減ってました。
だから、僕もどっかのタイミングで辞めて別のことをするんだろうなって思ってはいたんです。

ゆうき

会社の文化として転職が当たり前だったからこそ、古茂田さん自身が辞めるときも動きやすかったんですね。
それにしても、海外経験が無いのに海外に行こうと思ったのがすごいですよね笑
海外で靴職人になろうと思ったのは、何かきっかけがあったんですか?

古茂田さん

サラリーマンやってるときに紳士靴・革靴が好きになったからですね。それで、自分で好きな革靴を買うようにしてたんですけど、高級な既製紳士靴って、当時は1足10万~20万くらいしたんですよ。
サラリーマンが買い続けるにはまぁまぁしんどいんですよね。
だけど靴の本場のイギリスとかイタリアに行ってみたら、同じものが1/3ぐらいの値段なんですよ。なんでそうなるかって言ったら、革が日本に輸入されると関税がかかったり、商社や小売店が間に入ったりして、消費者の手元に来るときには3倍になるんですよ。
これを全部個人でやって3倍ではなく2倍ぐらいの金額にしたら、イタリアで1人ぐらいなら食っていけるんじゃない?って思ってやり始めました。イタリアって生活費が安いから、生活拠点をイタリアに移せばいっかぐらいの感じで行きましたね笑

ゆうき

それはちなみに古茂田さんがおいくつの時ですか?

古茂田さん

イタリアに来たのが38でした。だいぶいい年齢ですよね笑
それまでにイタリア語なんて勉強したことないから、準備期間中に失業保険を頂きながら、本を買って独学で勉強してましたね。通う予定の語学学校もイタリア語だから、そこで問題ないくらいには準備しておこうと思ってたんですよね。
色々準備したうえで現地で生活してれば、どうにかなりますよねって感じでした。

ゆうき

いやぁ、すごいですね笑
僕は小さい頃に父親の仕事の関係で4年半アメリカに住んでたんですよ。なので、アメリカに行くことは僕は普通なんです。
でも、古茂田さんは行ったことがないイタリアに、38歳で「行くか!」って選択できるのが普通じゃない気がします。
古茂田さんの中で不安はなかったんですか?

古茂田さん

無かったですねぇ・・・。
流石に38歳まで日本で仕事をしてきたから、野垂れ死ぬことはないだろうって思ってました。事故や治安の問題は別として。
イタリアに行って何もできなくて、そのうち飢えて死ぬとか絶対ないっていう自信は出てくるじゃないですか。
リクルートは結構楽しかったんですけど、飽きが来てたんですよ。そのうえで、辞めるってなったら今以上に面白いことをやらないと意味がないと思うんですよ。

ゆうき

うんうん、いいですね!!
僕も同意見です!

古茂田さん

自分がやりたい、面白いと思うことのために辞めるわけじゃないですか。それなのに、国内で転職して前職よりも面白くないことをやっても意味がないんですよ。
だから、紳士靴が好きだったし、もうちょっと安く手に入るものを自分が欲しいと思っていたし、靴のファンが一定数いると分かっていたから、やってみればいいんじゃね?って感じですね。
でも現実問題、同じ条件だと日本ではやれないから、現地に行くしかなかったんです。
でも、当時はイギリスとイタリア、どっちにしようか悩んでたんですよ。
直接見に行ってみると、イタリア靴がイギリス靴よりも造りが荒いんですよね。イギリス靴の方が本格的でした。
そう考えると、イタリア靴の方が参入しやすそうだし、ご飯が上手いし気候がいいし、条件が揃ってたんです笑
「イタリアに行ってもなんとかなるでしょ!」みたいな感じでしたね。

ゆうき

なるほどなるほど。
それがさっきの「やってみたらなんとかなるでしょ」っていう思い切りの部分にも繋がりますよね。

古茂田さん

そうですね。僕が行ったのはイタリアのフィレンツェだったんですけど、コックさんの日本人が一番多かったです。
彼らは調理の専門学校に通って、20歳で就職してお金を貯めて、20代後半から30代前半くらいでイタリアにやってきてるんですよ。そこで修行して、修行中にお金が無くなるからまた日本に帰って、お金を貯めて、やっとイタリアでお店をだせるようになるっていうのが彼らの王道のストーリーらしいです。
そうしていると、20代後半で30代の友達ができるから楽しそうだし、料理のことも吸収できるし勉強できるなって、見てて思ったんですよ。
リクルートを15年半やったことは意味のあったことなんですけど、もうちょっと早くイタリアに来てても良かったのかなって思いましたね・・・。

ゆうき

やっぱり現地に行ってみないと分からない、環境や人脈の部分ってありますよね。

古茂田さん

そうなんですよ!若いうちに海外を知っておいたら、他の選択肢もあったのかなって思いますよね。
僕がアメリカに来たきっかけは、さっき話したライトハウスの裸一貫の会長とは別に、今の社長がいるんですよ。その社長はリクルートの時の同期なんですね。
彼もリクルートでの最初の事業が進学事業で、その後の人材の新規事業でも一緒になったんです。
それで彼が辞めるときに、「またいつか一緒に仕事ができたらいいよね」って別れたんですよね。

そして数年後、彼がロサンゼルスに行ってライトハウスで社長をやっているとき、僕はイタリアにいたんですよ。
そしたら彼から連絡が来て「子会社の責任者が日本に帰らないといけないから後任を探しているんだよ。お前イタリアで遊んでるんだろ?」って言われて笑
僕もその時、若い時に早く海外を見たかったって思ってたし、「また一緒に仕事やろうね」って約束したから、「これは今やれってことだな!」っと思って、イタリアから来たんです。

ゆうき

いいですねー。
ご縁というか、同期との約束って。

古茂田さん

僕もご縁に恵まれたなって思いました。
声を掛けてもらったとき、1回断ったら次は無いなって感じたんですよ。
自分の学生の頃を振り返ると、高校時代は留学ってやっぱり選択肢になかったんですよね。その時にスタンフォードに留学する方法があるって知ってたら、もっと勉強して目指したかもなって思うんですよね。その時が人生で一番勉強してたから笑
高校1年の時から3年かけて勉強してたら届いてたのかなって思うし、選択肢が無いのはやっぱり残念だなって思いますね。
だから「やっぱり早いうちに見てみたら?」って話になるんですよね。「大学生でも今からでもスタンフォード行けるよ?」みたいな笑

ゆうき

本当そうですよね。
海外に行く選択肢が、その人の中に生まれる機会はどこかでありますよね。
その機会を提供するのがこの「でしゃばろうNIPPON!」でもありますし、古茂田さんがやっている事業だと思います。
少しでも多くの若い子たちに僕たちの考えが広がっていくと、ハッピーなことだと思うんですよね。

古茂田さん

僕も日本のために絶対いいことだと思います。
最近海外に興味がある学生って、SDGsやボランティアっていうワードが好きな学生が増えている気がするんです。日本より遅れている国のために何かしてあげるって、すごく大事なんだけど、今の日本にそんなに余裕はないと僕は思うんですよ・・・。
技術にしても経営にしても、日本より遅れている国に先進国の見よう見まねをさせるのも大事だけど、アメリカが何をやっているのか、日本がしっかり見よう見まねしたほうがいいんじゃないかなって思う機会が最近すごい増えました。

ゆうき

なるほどなるほど。
僕もそれに対しては、すごく賛成です。

古茂田さん

僕がアメリカに来た2014年には、今流行りの「Uber」が市民生活に定着した頃だったんですよ。Uberを知った時にすごい便利じゃんって思ったのを覚えているんです。日本ではUber”イーツ”が活躍しているけど、アメリカではUber”タクシー”の方がメインで、サービスとして日本にはまだない。まずそこに対して遅れを感じます。
あとは、僕がリクルートで退職前の2011年頃にホットペッパーでやっていた事業は、その当時アメリカで「スクエア」っていう、携帯で決済ができるツールがグングン来ているから、その決済サービスをやろうってなったんですよ。
それもあって、リクルートは美容業界でいいポジションを取れたんですけど、結局リクルートがそのサービスを考えた訳じゃないんですよね。「スクエア」が流行ったのを見て取り入れただけじゃないですか。
要は、0から1を創れる人ってすごい少ない、そんな中で闘うには、進んでいるものを見て、上手くパクるのが大事な時代なんです。
だから「途上国に行く暇があったらちゃんと周り見ろよ!」ってすごい思っちゃいますね。

ゆうき

うんうん!言ってることすごい分かります。
人の心配してる場合じゃないよって、そんな余裕は日本には無いんだよって思います。
ボランティアが悪い訳ではないんだけど、もっと大事なことあるよねってことですよね。

古茂田さん

そうそう!
実際ボランティアすることで「ありがとう」って言われるし、人間的に豊かになれる気がするから、気持ちは分かります。
そういう機会は大事なんですけど、世界で一番影響力がある国がやっていることを見ると、日本の遅れって衝撃的ですよね。
リモートワークなんか、5~6年前の段階で当たり前でしたもんね。

古茂田さん

これは5~6年前の話なんですけど、インターンのお付き合いをしている企業があるんです。
今は日本で契約している方がいるんですけど、当時、日本で旦那の転勤に巻き込まれて辞めざるを得なかった会計の方がいたんです。それもすごい田舎に転勤で・・・。
でも、その奥さんの会社の支社はその付近にないんですよ。
その時に、アメリカの企業が奥さんをヘッドハンティングして、在宅でやってもらってるんです。
この人も子育てがあるから、会社辞めて収入が減ったら困るので結局Win-Winなんですよね。
アメリカの企業からしたら、日本の田舎の給料なんて安いしですし。一番損したのはこの人を解雇した日本の企業で、これまでの育成コストとか、また採用からやり直さないといけないので、この人に在宅ワークの選択肢があったら全部失わなかったじゃないですか。
その構造を見た時に「在宅じゃダメなんですか?」って一言言えるか言えないか、そもそも知らないと言えないのもありますけど。
そういった部分で、やっぱり日本は遅れてるなって思います。
学生にはこういう側面も見て欲しいんです。

ゆうき

アメリカは開放的な見方で物事を進めますからね。
良くも悪くもルールがないので、絶対的なものがないから柔軟に進めやすい部分はありますね。

古茂田さん

うんうん。
できるんだったらいいんじゃない?みたいな感じですよね。

ゆうき

その開放的な強さは確実にあると思います。
古茂田さんが仰っていた日本の強みって、1つのことを突き詰めていってどんどん追求していくなかで、洗練するところだと思うんです。
だったら尚更0から1を創るんじゃなくて、既製品をマネして、自分たちなりに洗練させていくプロセスをガンガン回していけばいいなって思うんです。

古茂田さん

僕もそれが簡単だって思います。
イタリアにいたときに面白い話が合って、ミシュランのお店って結構日本人がいるんですよね。
それで、話を聞いたらネーミングとかレシピを作るのはイタリア人らしいんです。やっぱり生まれ育った感性やクリエイティブがすごいから。でもイタリア人はいい加減だから分量通りに再現しないんですって、作ったシェフは困るじゃないですか。
「こっちのほうが俺は美味しいと思う」って勝手なアレンジをしたり、「うちのママはこうやってる」みたいな笑
レストランで振舞うときに困るじゃないですか。

ゆうき

それは困る笑

古茂田さん

でも、日本人のコックさんは真面目に味を再現してくれるから、そこの評価はすごく高いらしいです。そこでシェフが言っていたのが「ミシュランの店のゴールデンパターンは、シェフがイタリア人で、その下のコックさんは日本人がいいんだ。それが一番クオリティを担保できるから。」って言ってました。

ゆうき

面白いですね!笑
でもそれってすごく理解できる。人員の配置によって、成功と失敗が分かりやすく出るんだろうなって思います。

古茂田さん

そうそう。その時に初めて「強み・弱みってこんなに出るんだ」って思いました。
だから日本がダメって訳じゃなくて、日本人がいる場所と戦い方は絶対に適した物があるんですよ。
海外に出たときに「我々はそういう民族だったのね」って僕はすごくわかりました。

ゆうき

いかに強みを上手く発揮できるか、その機会を提供できるのかが日本の課題ですね。

学生は、日本と海外を比べる力を持て!

ゆうき

最後になりますが・・・。
古茂田さんから、海外に出ようとしている学生に、何かメッセージはありますか?

古茂田さん

何においても主観と客観を持ち合わせることがすごく大事ですよね。主観で判断して自分で決めていくことって大事だけど、一方で、それを客観視して他と比べてみるって、日本から出ないとやっぱり比べにくいと思います。
他を見たうえで、他と同じやり方をするのか、独自路線で行くのかは、自分でやっぱり決めないといけないんですよ。
日本と海外を見比べるのと、見比べないのでは選択肢が全然違うし、それが主観と客観を持ち合わせるってことだから、学生は海外に出た方がいいと思います。

ゆうき

なるほど、そこで今日の話のメインテーマと繋がるわけですね。

古茂田さん

そういうことです。
あとは、これを読んでいるCXOの方にお願いがあります・・・。
我々は経験を積ませるためにインターンをお願いしているんですけど、8~9割の学生は、社会人として仕事をしたことがないんです。そんな学生に「インターンに来てもらってもなかなか教えることが多くて大変だ」みたいなことを言うんですよ。
確かに何も分からない学生に教えるのは大変ですけど、ここを避けていたら、日本のガラパゴス化は止まらないと思います。
というのも、さっき言ったロサンゼルスで日本のプレゼンス力を上げるには、そもそも日本人の絶対数がいないと始まらないんですよ。
何も経験できないと、結局は主観と客観を持ち合わせられないから、どんどん主観にはまって、ガラパゴスした国が完成するんです。

ゆうき

もしかしたら、アルバイトすらしたことがない学生もいるかもしれまんしね。
そんな学生からしたら初めての社会経験なのに、インターン先でも経験する機会が減っちゃうと、「なんのためのインターンなんだ?」ってなりますね。

古茂田さん

経験することを前提にしてアメリカに来ているのにかわいそうじゃないですか。
だから企業には大変かもしれないけど、経験する機会を提供してくださいってお願いするし、我々もインターンでどんどんお願いしたいって思っています。
更に言えば、インターンとか関係ないところでも若い人には世界を見て欲しいです。日本のために一緒に世界を見せたいですよね。
これが僕からのメッセージです!

ゆうき

日本の現状を打破したいということですね。
僕もそれすごい賛成です。古茂田さんみたいに、若い人にそういった機会を直接与えられる人って、本当に少ないと思います。
今後の日本のためにも、海外から日本を盛り上げていきましょう!
古茂田さん、今日は素晴らしいお話を聞かせてくれてありがとうございました!!

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