「自分たちの子どもや孫の世代が誇りを持って日本人でいられるようにしたい」─翻訳・通訳から映像制作まで手掛けるマルチな活躍を世界に魅せるゆうがさんに、そう思ったきっかけから現在の活動について幅広く伺いました。
インタビュー相手
山口悠雅 MIYABI Creative President&Co-Founder
国際基督教大学教養学部卒、ペパーダイン大学経営大学院在学中。新卒で本田技研工業にて海外営業と商品企画を経た後、独立し音楽アーティストマネジメント、通訳・翻訳やコンサル業務に従事。米国ロサンゼルスでMBA在学中に現地パートナーと映像プロダクションMIYABI Creativeを起業。ハリウッドでの映像作品プロデュースや日本企業のアメリカ進出支援に注力している。
今日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
すごくかしこまってすね(笑)
3ヶ月くらい前からゆうがさんといくつかお仕事をご一緒させていただいて、いつかインタビューをさせていただきたいと思っていたので、今日はとても楽しみにしてました。よろしくお願いします!
はい、お願いします!
簡単に自己紹介をしていただけますか?
はい。私は今、ロサンゼルスでMBAに在学しながらクリエイティブ・エージェンシーを経営しています。あとテレビドラマや映画などのプロデューサーも務めさせていただいております。
私は日本で生まれ育ったのですが、メタル音楽が大好きで「メタルバンドの通訳になりたい!」と思い、高校生の時に一年間イギリス留学をしました。その時イギリスで酷い目に遭ってしまって(笑)いかに日本が素晴らしいかを改めて学び、そこからどんどん海外で日本を盛り上げていこう! 海外で頑張る日本人を応援したい! と思いサポーターを始めました。
日本人、アジア人として自分たちのプレゼンスを高めたい
聞きたいことがいろいろあるので、この時間で足りるか?と思いましたが、聞けるだけ聞いていきたいと思います!
クリエイティブのエージェンシーや映像関連をやってらっしゃるとのことですが、今具体的にどういうことをされてるのか聞かせてください。
MBAのクラスで映画プロデューサーの同級生(ミネソタ出身の白人アメリカ人)に出会い、彼と意気投合して、直接クライアント様とやりとりしながらコンサルティングするマーケティングのプロジェクトに参加させていただいたんです。そしてそのクライアント様にすごく気に入ってもらえて、その方からお仕事をいただいたという経緯がありました。
一緒に広告代理店や広告を作るビデオプロダクションを始めようという話になり、今は現地の企業や、アメリカに進出したい日本企業の、コマーシャル動画であったり、クラウドファウンディングキャンペーンの支援をしています。
私は日本人として海外に渡り、ゆうきさんもよくご存知だと思うのですが”アジア人差別”がどうしてもあることに悔しい思いをしました。日本人としてもそうですけどアジア人として自分たちのプレゼンスを高めていきたいと同級生の彼に相談したところ、映画プロデューサーである彼は、「解決策の1つとして、アジア人が主人公で、アジア人のタレントもスタッフも両方ともアジアンアメリカンのプロジェクトをやろう」と提案し、サポートしてくれました。
これは今取り組んでいるところなのですが、本当は明日撮影開始のはずだったんですけれども、開始が遅れています。なにかと問題が発生していて(笑)
日本から海外に進出される企業様向けに映像で表現しようという観点もそうですし、それをローカルで生まれ育ったパートナーと一緒に取り組んでいるというところが、ゆうがさんならではですごく面白いと感じます。
アメリカで表現をする面白さやユニークさは、どういうところでしょうか?
違いを感じることは日々たくさんありますが、特に面白いなと思うのは、アメリカは単刀直入ということですね。会社名1つとっても、日本だとおしゃれなブランドのような名前やかしこまった名前をつける会社が多い気がしますが、例えばトイレを修理する会社だとすれば、直訳すると「トイレを直しますよ!私たちが!」というような文章をそのまま社名にしていたり。
トイレ直しますよ、私達が(笑)
そうなんです(笑)社名じゃなくてもそのようなサービス名にしてたり、パッとわかりやすいものが多いです。ビジネスが盛り上がってるからというのもあると思います、分かりやすいものを使うみたいなところもありますし、競合が多いからということもあると思います。
日本ではある程度、感覚や言語的なものもある程度共有しているから、想像や空気読むというような文脈で何か働くものがあるんでしょうね。
アメリカだと多民族、多様の中で「分かりやすくないと伝わらないよ」というところから、名前もシンプルでストレートになるということが起きるのでしょうか。
そう思います。多民族国家の極みみたいな国なので、そもそもハイコンテクスト・カルチャーでもありません。共有してるものが何もないという前提のもと、様々なことが成り立ってるんだなと感じました。
何事もわかりやすくはっきりと意味を呈して、伝わるものを出してるんだなと思います。
そうすると、表現の仕方やアウトプットとしての動画も含めて、良い悪いではなく日本人の感覚で「こうだろう」と思っていたものが、全然響かない、届かないとことは、大いにあり得るでしょうね。
特に思うのは、結論から伝えないと話を聞いてもらえなかったり、途中でぶった切られたりすることも多いです。日本みたいにきちんと状況説明をして、最後に結論を伝えるということをしてると、最後までたどり着かない可能性が高いです。
熱い想いが周りを動かす原動力に
なるほど。
では次はドラマ制作について聞かせてください!
こちらについても日々の葛藤や苦労、そして”表現”することのプロセス中で、ゆうがさんが発見することはありますか?
もしかしたら“表現”とはちょっと違ってしまうかもしれないんですが。
先ほどお話した通り、常識を共有してないということを前提にしてるのもありますし、”決まり”というものがあまり機能してないので、たくさんのことをゴリ押ししないと話を聞いてもらえないです。けれど逆にゴリ押ししたり、熱意をしっかり伝えれば、実現できることが多いと感じています。
今取り組んでいるドラマは、パッション・プロジェクトで始まったので、お金も何もないところからスタートしました。私は「アジアンアメリカンのドラマを作りたいんだ!」ということを皆さんに本当に一生懸命伝えて。
それでお金を投資していただいたり、場所を無償で貸していただいたり、あとすごく有名なディズニーや、ピクサーの映画に出ているアジアンアメリカンの女優さんが、ありえないぐらい安い価格で出てくださったりすることになりました。
SAG-AFTRAというアクターの米国映画俳優組合と折衝してるんですけど、そちらも「申請は3週間前までしか受け付けてません」と一度突っぱねられたけど、それを毎日電話して「今週始めたいんです!」と熱く伝えていると、なんだかんだうまくやってくれたり!
大変だけど、温かみを感じるようなことは節々にありますね。
その映像は、どういう形のアウトプットを今目指していますか? タイミングも含めてどんな状態なのでしょうか?
今『Man Imperfect』というドラマのシーズン1を制作しているのですが、7エピソード・各20分の動画でNetflixやAmazonプライムなどのニューメディアにパッケージとして売り込むことを前提に制作しています。ティーン向けのカミングオブエイジのような、青春ロマンティックコメディの話です。
アジアンアメリカンに共通する問題として、完璧主義の方が多い。社会的にもアジア人は勉強ができる、真面目だと思われるプレッシャーがあり、さらに自分の親(移民の方に多い)からも、「医者になれ」「弁護士になれ」等、期待を多く背負って辛い思いをしてるアジアンアメリカンたちがたくさんいるんです。
自分はアメリカ人として生まれたのに、アジア人に対しての期待を背負って頑張らなきゃいけないと思っている方たち。その人たちに響くように『完璧主義でスタンフォードに通う主人公が途中でドロップアウトし、近くのカフェで働き始める』というところから始まるストーリーです。
「完璧を目指さなくてもいいんだよ」というロマンティック・コメディですね。それが周りのアジアンアメリカンとかアジア人に爆ウケで!
「自分のことを聞いてるようだ」「すごい共感できる!」「絶対見たい!」と言ってくださる方がとても多くて。
共感をたくさん得ながら、協力をたくさん得ながら、ギリギリで制作しております(笑)
ありがとうございます!
資金の調達の話や、たくさんの仲間を巻き込むとプロセスがあるということなので、それはまた「映像制作とは?」というようなテーマで、コラム的な形でしっかりお聞きする時間を作らせてもらいたいと思います。
メタルから英語を学び、そして通訳へ
他にも聞きたいなと思っていたことが「メタルバンドがすごい好き」で、それの翻訳?通訳?になりたい!みたいな話が冒頭にありましたが。
今もビジネスとして関わることがあるとお伺いしていたので、そちらの関連でどういったことをされていたか、今どういったことをされているのか、詳しく聞かせてもらってもいいですか。
まず、申したように私はメタル音楽が大好きなんです。
中学2年生のときに初めて行ったメタルバンドのVERSUS THE NIGHTというメタルバンドのライブで、ジャニヲタから一気にメタル大好きになりました(笑)
ハハハハ! 覚醒した?(笑)
洋楽を聴き漁って、一生懸命英語を勉強するところから始めたのですが、日本にメタルバンドがツアーに来る際に「私が一番最初に会う日本人になって、日本の良さを大好きなバンドの人たちに伝えたい!」と強く思ったのがきっかけです。
すごいね! そのパッション。
もう本当に大好きで、英語の勉強を始めました。そこで高校生くらいの時からTRIPLEVISION ENTERTAINMENTという、TSUTAYA傘下で私の大好きなバンドのほとんどを抱えているレーベルがあったのですが、私が高校生くらいの時に、そちらのレーベルマネージャーの方が私を発掘してくれたという感じです。
自分で翻訳した記事等を書いていたら、プロの業界人だと思って話しかけてくださり「一緒にやりませんか?」って言ってくださって。それから、ほぼ専属のようにバンドのツアーマネジメントを始めました。最初は喋る英語のスピーキングは全然できなかったのですが、やります!って言いきりました。
パッションを持って対象に打ち込んで、結果的に目標をちゃんと叶えているわけですもんね。
そう。叶っちゃって、途中路頭に迷いました(笑) 人生の目標だったのにすぐ来れちゃったと。どうしようこの先……と思ったのもあって、その後別のパッションである日本のモノ作りの本田技研工業に就職したんですけれど(笑)
高校生のときから……とおっしゃってましたが、その時からレーベルに専属のような形で、アーティストの通訳や翻訳の仕事にされていたということで合っていますか?
はい。なんだかんだ10年くらいは、メタルや音楽界隈の通訳、翻訳をしておりました。その過程で、通訳や翻訳をしているということを周りの方に知っていただけたので、アート系、例えばルイ・ヴィトンがイベントをする際にお招きするアーティストの通訳や、さらにはVIP通訳に慣れてるためインドの首相が来日される際に、首相や周りの方々のアテンド通訳を任せていただいたりとか! 面白い案件をたくさんいただいて、信頼していただくことができて、充実した通訳生活を送りました(笑)
いやぁ、聞きたいことが本当にいっぱい出てきます。通訳、翻訳もそうですし、他言語で表現をするっていう観点では先ほどの映像や他の話にも全部通じると思うので、1つ1つのテーマについてはまた追って聞かせてくださいね。
海外で暮らし、改めて気が付いた日本の素晴らしさ
では、世界で日本を応援するということや、表現することについて、ゆうがさんの思い、そして「日本ってこういうポテンシャルあるよね」という観点や、メッセージ等があれば聞かせていただければと思うのですが。
私は高校生の時にイギリスに1年間留学して、本当に”海外かぶれ”で。アメリカ、イギリス、オーストラリアや、海外の音楽アーティストが大好きで、海外に住みたい、日本ダサい、なんて思って生きてきました。
でも、初めて海外で生活をしてみて、人種差別などにも遭うし、生活のクオリティや安全さ、様々なサービス、そして商品の完成度の高さ等……自分がわかっていなかった日本のすごさ、ありがたさを身に沁みて感じました。
10キロくらい体重も減り、ゲソゲソになって帰ってきて、私は世界にこの素晴らしい日本を伝えないといけないと感じました。また、日本の皆さんにも如何に日本が素晴らしいか、そして如何に外に出ていってそれを武器に戦うことができるか、如何に日本人でいることが素晴らしいか、ということを伝えていかないとなというのをとても実感したんです。
敗戦国だった日本を世界一豊かな国にしてくださったのは、やはりこれまで頑張ってきた、主に製造業ですよね。日本の製造業の皆さんのおかげで日本の製品は本当に信頼があって素晴らしいよねと言ってくださったり。
トヨタ、ホンダ、ソニー等は、世界中ほとんどの国でその商品を知ってる方々がいます。
先人が積み上げてきた信頼をただ浪費して生きている部分というのはどうしてもあると思うので、製造業に限らず、まだまだ日本には改めて世界に広めるべき本当に良いもの、世界一のサービスがたくさんあると思います。
世界一の面白い漫画、アニメ、ゲームがありますし、世界一の食とホスピタリティがあると思います。本当にいいものをたくさん持ってるから、これからみんなで頑張りましょう! ではないですが、みんなで盛り上げて、どんどんまた強い国にしていきたいんです。
皆さん、ぜひ一緒にやりましょう!(笑)
素晴らしい! 今聞いてて鳥肌立ちました。本当……その通りですね。
何もわからない、メタルが好きなだけの変な高校生がイギリスに行って、それでも信頼してもらえたり、友達ができたり、東京に住んでるのすごいね!という話題があったり、それも日本という財産のおかげだからだと思うんです。
これからも、自分たちの子どもや孫の世代が誇りを持って日本人でいられるように頑張りたいですね。
本当ですね。みんながそうするかどうかわからないし、得意、不得意もあるかもしれないけど、声を上げる人たちはいて然るべきだと思います。
それは企業かもしれないし、日本っていう国自体だったり。日本はそういう声を上げるべき対象なんだと改めて感じました。ありがとうございます。
今後も、表現っていう大きなテーマで、映像、翻訳、通訳等、たくさんの話をお伺いしたいと思います!
今日はまず第1回ということで、お時間いただきありがとうございました。
ありがとうございました!
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